
久しぶりに元町の海文堂に行ってみた。かってはこの付近に勤務先があったので元町通りはよく歩いた。最近は大型書店ばかりが目立っているが、僕は昔からこの書店で海や船の本を買っている。海事関係のコーナーがあって本を選び易いからだ。昔、本棚に沢山あった船員向けの専門書は少なくなってしまった。日本の船会社の持ち船にも日本語が読める船員が居なくなってしまったからだろうね。
表題の本を買った。サブタイトルに「シルバー世代のおっかなびっくり冒険野郎」とあった。ヨット雑誌のKAZIに投稿された記事を本に纏められたので、KAJI誌で読まれた方も多いだろう。(羽山泰夫著 ネコ・パブリッシング発行 定価1,600円)
「ヨットで太平洋を渡るのはもはや冒険ではない」と誰かが言っていたが、個人が自分のためにする航海としては充分冒険の分野に入るだろう。
今まで多くのヨットマンが凡そ7000マイルの太平洋を単独航海しているのだが、その航海を完成させようとするエネルギーの源がどこにあるかを知りたいと思って本を買っている。
彼のヨット歴を見ると長いブランクがあり、自分のヨットを所有したことはなかった。会社を定年退職してから再度始められた様だ。その時期、人生の目標がこの大洋の横断だったようで、長く乗りたい為にアメリカでフネを買って来た訳ではなく充分に気力と体力と時間がある内に長年の夢を実現しようと思われたのだろう。
限られた資金で太平洋の横断に適したヨットを建造し、長期間の航海に耐える艤装を施し、短時間の内にもろもろの準備に忙殺される。大変だろうと思う。それも外国で一人でやっている!
航海の準備はいくらやってもキリがないようだと良く書いてある。そうこうする内に出発の期日が来てしまい準備不足のまま出航し、トラブルで悔やんでいる話がよくある。この春、東回り無寄港世界一周の航海をした大ベテランの堀江謙一さんはヨットが進水してから半年以上?も準備に充てていられるようだった。桟橋に繋がれたマーメードを見つけて、未だ行ってなかったの?とボクが思ったくらいだから・・・。
航海記を読む時、動機の次に関心があるのはその航海にどの様な艤装をして、その艤装品がどのように効果を発揮したか、あるいは無駄だったかを知りたいし、興味がある。そして、その時どんな装備が一番欲しかったか等だ。
自分がヨットを発注するときはそのヨットでどのように楽しむかをまず決めて、最大の努力(資金の)で自分が理想と思うものを艤装に盛り込む。もし、僕がこの航海をするのだったら、がっしりとした頑丈なドジャーと強力なオートパイロットを2台は何を置いても装備す。 デッキに出て見張りをするとき、同じ合羽を着ていてもしぶきを受けての濡れ具合は相当違う。又、大洋の横断のような航海でも風が弱かったり、ウインドベーンの不得意の風は必ずある。そんなときにはオーパイは大いに役立つ。しかし、電動なのでバッテリーから電気をを食う。従って充電の為エンジンを回さなくてはならない。多少燃料は余計に消費するが、正確にコースが引けたら日程も気分も楽でお釣りが来そうだ。
カッターリグも良い選択だが、ジブの昇降に激しく揺れるフォアデッキまで行かなくてはならないので大変だったでしょうね。ジブファーラーは殆どのクルージングヨットには装備されているし、そして長距離航海にも充分耐える性能のものも多い。
この航海でもウインドベーンに舵を引かせているが、中々上手く働かないとの記述がよく出てくる。この装備をうまく使ってる人は愛称をつけて呼んだりしているが、悩みの種になったフネも多かったようだ。最近は長距離航海もヨットの電源事情がよくなってきてオーパイで走らせているヨットも多くなっていると聞く。
アメリカから無事日本に帰り、念願の日本一周の港巡りもされて艇は既に「ダナ24」ファンの次のオーナーの元で乗られているそうだ。バウスプリットの付いたクラシックな感じのヨットだ。高くなければ一度は乗ってみたい船だな。

つい最近、ボクと同型艇で鹿児島からシングルで太平洋を渡り、アメリカに行きその後、2年間くらいクルージングして帰ってこられた方とお話をする機会があった。色んなお話の後、クルージング全般としてどんな印象でしたかとお聞きすると、クルージング中は大変なこともあったが、今考えると、「すっごく楽しい時間だった!」とおっしゃった。
やっぱり、人が書いた航海記を100冊読むより、自分でやって見るのが一番だろうなと思った。 ・・・が、しかし・・・。