ビームアンカーを打つ
例えば、艇の横から吹く風が強くなり、フェンダーが潰れてしまう程になりそうな時。あるいは係留した場所が港内の航路に面していて大きな引き波が艇を揺らし、桟橋や岸壁に激しく打ち付けられるなど、また、潮汐によってフェンダーがその効果を無くしてしまう、あるいはそのような可能性があるときにはビームアンカーを入れておくべきだ。
昨年は五島列島奈良尾港、壱岐芦辺港の浮き桟橋で2回、神戸港などの本船用岸壁で2回打った。ビームアンカーを打ち損ねて俵フェンダーが潰れてしまったことが九州で1回あった。
《 打ち方 》
空いた岸壁や桟橋のまず、沖に錨を入れて、ゆっくりと槍着けの要領で近づく。そして、陸や桟橋からロープを取ったのち船を回して横着けにし、船尾のラインを船体中央のクリートかマストのあたりのステーまで回して来て止める。アンカーラインが船の真横方向に延びるからビームアンカーと言う。横を通る船が引っかけないように、アンカーモニターを吊るしてロープの角度を深くする必要がある。これで普通の日和なら岸壁と船の間は適当に開いて、舷側の汚れや傷みの心配がない。
風が強くなってきたり、風向が変れば、ビームアンカーを逆Y型にしてバウとスターンから引き、風向に合わせて艇の姿勢を調節する。
でもあるとき、ボク達は旅先の浮桟橋にいた。その夜強風が予想されたのでビームアンカーを入れて岸からも長いロープでまし舫いを取ったが、後から入ってきたロングクルージングのヨットは丈夫そうなタイヤフェンダーを入れただけだった。フネが風に押されてフェンダーでゴリゴリ擦られても平気のようだ。確かにアンカーを打ったり、また回収するのはメンドクサイ。でも夜中にステーがヒューヒューと鳴り、マストに受ける風圧でヨットがヒールし、桟橋に押し付けられる音を聞くのはメンドクサさを越える辛さだ。クルーが乗っていても嫌がる時もあるが、断固アンカーを打つことにしている。
↑画像は今年4月、愛媛県今治港で係留した時の画像だ。港務所は港内で係留可能な岸壁としてこの場所を指定し、槍付けは通行の船舶に邪魔なので不可。横付け、ただし、これから大分潮が引くのでペンドルはしっかり入れときなさいよと注意して、25円の停泊料を徴収していった。この岸壁はゴムの防舷材の下1m位で垂直の岸壁はなくなっていて、奥に鋼板の矢板が見えてくるはずだ。
風は旗で分かるが岸壁に吹き寄せられる風だ。手順通りに逆Y型にビームアンカーを入れ岸壁から1mほど引き離した。
さらに暫くすると船首側の空きバースにタンカーが入ってきた。出航用のアンカーをボクのアンカーの上に落とそうとするので本船のバウマンにアピールする。すぐ近くにガラガラ、じゃぽーんと錨を落として後進で割り込んできた。
確かに活気のある本船用の港に着けるのは苦労も多いが、でも、たまには面白い事にも出合う。これからも時々は片隅にお邪魔したいと思っている。
by pac3jp | 2006-06-14 09:26 | アンカー