海のレゾナンス 「単独世界一周ヨット、リサ号と」

 自分のヨットで世界一周の周航をしてみたいと思う気持ちはヨット乗りなら誰でも持っているだろう。ただその実現は中々難しい。

 1895年4月24日、正午に抜錨、出帆し、満帆に風をはらみボストン港を後にしたキャプテン・スローカムと37fヨールのスプレー号は世界一周に旅立った。そして幾多の海のロマンに満ちた航海を続け、1898年6月27日ニューポートに帰ってきた。
 史上初めて世界一周を個人が単独で成し遂げたのだった。この航海は「スプレー号世界周航記」として出版され、以来100年にわたり世界中で愛読されてきた。日本のヨット乗りも読んだ人は多いはずだ。

c0041039_8335864.jpg
 標題のご本は北海度・小樽のヨットLISA号でオーナーの大龍さんが昔から暖めてきた、単独無寄港世界一周航海の夢を実現させようとして闘ってきた物語だ。LISAはベネトウファースト405、船齢10年の中古艇を買い、シングルハンド世界一周に耐えるヨットに改造されてきた。
 2001年9月24日小樽港マリーナを出港して2002年7月14日に帰港された。航海日数は294日、航海距離は30,000マイルだった。

 誰もが一度は憧れるが、ヨットが判ってくるに従い、その大変さが理解できる単独無寄港世界一周航海を計画し、実行されたその意思と努力にまずは敬意を表したいと思った。

 そして、彼は航海の準備に多くの時間をかけ、出来る限りの準備をした自信があるとおっしゃっている。その言葉通りこの本には55ページを割いて航海計画や長距離単独航海の為に考えられた各種の装備艤装について詳しい考察や使用の結果なども書かれている。ボクも色んな航海記を読んだが、こんなに自分のヨットの装備艤装を詳しく書いた航海記を見たことはない。当分、大航海の計画はないが、大いに参考になる。本の代金1,800円はこれで元は取れた。

 航海記の文体もあっさりとスマートでテンポ良く書き綴られ、ほんとに読みやすい。ドレーク海峡からホーン岬に至る荒れた海を航海する部分は特にいいと思った。ホーン岬をレーダーで確認したのは意外だったが、チリ海軍もレーダーで通過を確認したから証明書を発行してくれたんでしょうね。

 ホーン岬を越え、南氷洋近くで氷山に衝突し、マストに大きな損傷を受け、退船の準備までするが、ヨットを何とか大西洋を渡りケープタウンまで1ヶ月余の航海が出来るようにリカバリーできたのもインマルサットを2システム、2台も装備していて、陸上のサポートチームと緊密なコミニュケーションが取れたことが大きいのだろう。

 このトラブルで無寄港という思いは果たせなかったが、ヨットをドックに上げるとラダーに重大な故障が発見された。もし、航海が続行されていたら、いずれ何処かの大時化の海でラダーを失うという事態が発生しそうだったが、それは回避されたことで不幸中の幸いだった。

 喜望峰からインド洋を渡り、タスマン海で風速50mの大嵐の中でパーフェクトストームのラストシーン、30mの巨大な波を漁船が駆け登って行くシーンが大げさでなく本物だとの実感も得たそうだ。
 
 世界一周航海も赤道を越えると日本はもう近い。台風と黒潮には注意が必要だが、もう、彼にしたら自分の庭のような表現になってきた。

 この本を読んでいると、大阪からメルボルンのレース如きは自分でも簡単に出来そうに思えてくるから不思議だ。勇敢さと冒険心の残っているヨットマンに是非この本を読んで見られることをお勧めする。両方共ない人でも読んでみたら勿論、楽しいよ。

 ボクは勇敢という言葉も知らないヨット乗りだから、無寄港や単独も到底無理なので、いつものパートーナーとのんびり、日本漫遊くらいで充分だね。
c0041039_8343028.jpg

 本書のタイトル「海のレゾナンス」のレゾナンスは「共鳴」「余韻」といった意味だそうで、著者の航海記に書き表せなかった思いがこの言葉だそうです。
[PR]

by pac3jp | 2005-10-28 08:46 |  

<< 失敗に学ぶ クルージングヨットのセーリング技術 >>