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クルージングヨットのセーリング技術

 瀬戸内海で行き交うクルージングヨットは殆どが機帆走である。たまには絶好の機帆走日和?の風の日でも機走で走っているヨットを見ることもある。メインセールを展開している目的はローリング防止のためで推進力にあまり期待はしていないのだろう。
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 あるときクルージングに同行した琵琶湖出身のセーラーから「ヨットのクルージングってエンジンで走るんですか?」と素朴な質問をされ、聞かれたオーナーがぐっと、詰まってしまったとか聞いた。

 確かに外洋を帆走するクルージングと違って瀬戸内は潮流があり、漁船や本船も多く航路や、網の障害物あってセーリングだけでは目的の港に日程通りに着けないこともある。と、自分に言い訳しているが、実際、セーリング技術は落ちてきたように思う。

 そんなヨットマン達も時にはヨットレースにも出たいと思うようだ。ヨットマンも大雑把に分けて3派ある。レース派、レースとクルージング派、アンチレース派である。ボクの仲間は3番目が多いと思っていたが、メンバーの一人が少し前、実力かビギナーズラック?か判らないが優勝カップをもらってしまい、俄然レースに熱心になってきた。その影響でアンチレース派の純クルージングヨットまでが草レースに駆り出されるされる事になってきた。

 先週末、クルージングヨットマンもレースでうまく走れるように帆走技術を練習する帆走会が開かれた。

 ヨットレースともなればシェイプされたヨットでクローズホールドのスピードとスピンワークの優劣が勝敗を決めるだが・・・。

 本日のクルーはいつものメンバー3人と小学生2名、彼らの祖父と合わせて6人だった。レース海面には海上強風波浪注意報が出ていて、西寄りの風、16~22ノット。アウターのスタートマークは5,000トン積みのバージだ。これにぶち当てたら完全に沈没だ。7艇が参加している。充分注意してゆっくりとスタートする。既にマグロが1匹出来上がっている。アビームで第一マークの赤灯台へ。艇速は7ノットを越える。
 トップは今春進水した34fの新艇で、2番手はレース好きの32fだ。風上にはニューセールで決めてきた3枚張りのケッチ。下はビミニとドジャーでクルージングヨット正装の35fがいる。

 4番手で赤灯台を回航し、真追手になってきた。風は上がり、ブローで28kt。一文字防波堤から打ち返す波で大きな三角波が立っている。ここで、2匹目のマグロが出来上がる。スピンどころではない。ブローチングに注意してジャイブを数回する。ジブをリーフをして観音開きにしたいと思うが、三角波のローリングでジブが潰れてしまい断念。キャビンの棚で食器が鳴リやまない。

 気分の悪くなりそうな海面から白灯台を3番手で回り込み、一文字防波堤内側に入ると波はややましになった。これからクローズホールドのコースだ。だが、ここは土砂運搬用のバージが勝手放題にアンカリングしている。その間を抜けて強風の海面をクロスのコースをタック、タックでセーリングしなくてはならない。クルージングセーラーが一番苦手とする状況だ。
 レースでなければ強力なエンジンパワーでジブがシバーしようが、障害物をパスしてゆくのが、そうは行かない。タックのたびに船足が落ちる。

 クローズホールドのセーリングスピードは船型にもよるがセールの良し悪しが一番影響する。先頭のヨットは真っ白のきれいなセールでどんどんとリードを広げている。
 我艇は1万余マイル、10年間使ってきたセールでこのコースはキツイ。クロスのコース途中から風はやや落ち、14~20ktになり、良く振れだした。バージ群を抜け出し、広い海面に出ると、角度はあきらめ、落し気味でスピードを付けようとするが、後続のケッチが大きく見え出したので気が散る。

 2番手で白灯台を回航した32f艇はクルージングヨット定番のメインファーラーでこのクロスはキツイのか、バージ群からいまだ抜け出せないようだ。やがて、トップ艇のフィニッシュがみえた。今は2番手にいるが、3番手のスピードが良い。下にいた3番手のケッチがアウターのラムラインに入ったのか、タックをしたが我々は風が振れるのを見込んで、多少上よりを狙ってフニッシュのコースに乗せた。運良くトップから8分遅れたが2位に入った。

 後ろを見ると4番手はこのバージだらけの海を30年近くセーリングしてきたベテランヨット乗りと往年のレーシングヨットだ。コース取りも良く、クローズホールドは何時もながら早い、3杯抜いたとおっしゃっていた。

 クルージングヨットマンが帆走技術を向上させる王道は出来るだけ多くの時間をヨットの上で過ごし、エンジンに過度に頼らず、帆走を楽しむことだろうが、忙しい仕事をお持ちのヨットマンにはそれこそが難しいのだ。

 結局、帆走技術も含めたシーマンシップは自分が出来る範囲からこつこつと時間を掛けて積み上げてゆくもんなんでしょうね。
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by pac3jp | 2005-10-25 09:30 | シーマンシップ  

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