バイキングの太陽コンパス
ノールウェーのべンゲルから北海を渡り400km先のシェトラント諸島までの北海を復元した大型のヴァイキング船「クナール」に乗り組み古代の航海術で航海するのだ。ナビゲーターには英国の「サー」の称号を持つ有名なヨットマン「ロビン ノックス-ジョンストン卿」が乗っている。そしてその針路を決めるのはバイキングの「太陽コンパス」だった。
太陽コンパスの発見は1948年デンマークの考古学者がグリーンランドの遺跡から用途の分らない16個の目盛りがついた木製半円盤を発掘したことから始まった。最初はコンパスカードなどの方位板ではないかと研究され「ヴァイキングの航海」という本に纏められたが、当時は否定的な意見が多く結論にはいたらなかった。その後、30年がたち、1978年スウェーデンの天文学者が興味を持ち調べた結果、半円盤の表面についていた引っかき傷がノーモンの線であるという確証をえた。
この線は日時計の中心の棒(Gmonom)の先端が描く軌跡であり、ノーマン線がノーマンに最も近い時の影は南北を示すことになる。これを基準として方位が定められるから、この線を持っていれば、この円盤を水平に置き、ノーマンの影の先端がノーマン線に接するようにすればその影の方位が太陽の方位を示すことになるのだ。
このノーマン線はこのコンパスを使用する海域の緯度と太陽赤緯それにノーマンの高さによっと異なるから、季節、場所によって多くの曲線群が用意されなければならない。
太陽コンパスを実証するためにデンマーク国立博物館のアドバイザーだったテアンド船長が自作のコンパスで海上実験した。特に1991年、3隻の復元ヴァイキング船が大西洋を横断した時、この太陽コンパスも使われ良好な成績を収めた。
また、今回のナビゲーターだったジョンストン卿は彼の「スハイリ号」でグリーンランドへの航海にもこのコンパスを使用した。そして充分に使えるとの確信を得て、その後に行われたカティサーク・帆船レースの会長として2500台もの太陽コンパスをデンマークのテアンド船長に発注して各艇に使用させた。このようにしてこの遺物は確かにバイキングが使った太陽コンパスであり、充分実用に耐えることが証明されたのである。
現在の天測では時間に対応する太陽の高度方位角の計算を行うが、太陽の高度に対応するノーモンの影の先端の軌跡を描けば、それが、ノーマン線となる。今考えれば我々が日常行っている計算と同じことをバイキングはアナログ的に実行していたわけで、この太陽コンパスの精度のよいのは当然である。(航海技術の歴史物語 飯島幸人著 より)
また、バイキング達はいくつかのサガ(北欧中世の散文物語)のなかにグリーンランドへの水路誌のようなものもあり、それには島の形状、浅瀬の場所、海流の性質や海洋生物の存在など、船乗り達が幾世紀にもわたって語り継いできたものをまとめたものようだという。
しかし、バイキングがこのような太陽コンパスを一千年前に使っていたことが分ったのが、つい30年前だったいうことが意外だったなあ。
でも、大西洋をオープンボートに乗り、太陽がでない雨の日も星が見えない白夜もあるのだ。そんな太洋をコンパス一つで渡ってゆくのは大変な勇気がいったでしょうね!!
【参考Web】:サー ロビン ノックス-ジョンストンさんのHP
by pac3jp | 2010-02-11 17:26 | シーマンシップ