日本のロイアル・ヨット
買い手付く?フセイン元大統領の「浮かぶ宮殿」売却へ (asahi.com 2008年11月4日19時43分)
【カイロ=田井中雅人】イラク政府のダッバグ報道官は2日、フセイン元大統領が所有していた豪華船「オーシャン・ブリーズ」号を売却すると発表した。全長82メートルで、プールやモスク、ミサイル発射装置、小型潜水艇などを備える「浮かぶ宮殿」の売却価格は3千万ドル(約30億円)になると見込まれている。AFP通信が報じた。
オーシャン・ブリーズ号は81年にデンマークで建造された。外遊中に国政が不安定化することを恐れた元大統領は、使用することはなかったという。現在、フランス南部ニース近くに係留されている。
ヨルダンのアブドラ国王の関連企業が元大統領から譲り受けたと主張、英国の仲介業者を通じて昨年、3450万ドルで売却しようとしたため、イラク政府が所有権を主張して法廷闘争になった。フランスの裁判所がイラク政府の訴えを認め、今年7月にはヨルダン側が所有権を断念する書簡を示していた。
幕末の日本でもロイアル・ヨットといわれる船はあった。それは1858年(安政5)将軍・徳川家定に対して英国のビクトリア女王から全長42mの60馬力・2本マストの蒸気推進ヨット、エンペラー号が献上された。この船は英国王室が日本国王(将軍家)用のロイアルヨットとして建造された船だった。
せっかくの豪華な贈り物も幕末動乱の時代で将軍にそんな余裕はなかった。幕府は砲3門を持つこの船を「蟠竜丸」として軍艦に転用してしまった。そして榎本艦隊として江戸脱走、函館沖海戦で官軍の朝陽丸を撃沈するなど活躍した。
また明治3年、政府はフランスからナポレオン三世妃のヨットだったスチールの外輪型スクーナー、ティポール号を灯台巡視船として買い入れ内外の貴顕を招き新設灯台の落成式などに接待している。
明治8年、日本が計画し英国で建造された2本マストトップスルスクナー艤装を持つ汽船、明治丸(1000トン)が就航する。この船は公式には灯台巡視船として建造されたとなっているが本当はロイアルヨットとして造られていて「灯台巡視船であるとともに皇室用の船として計画された」と記録にある。この船は重要文化財として東京海洋大学に現存する。
明治35年、大正天皇が皇太子の頃、長崎の三菱造船所に行幸した記念として三菱の総帥岩崎久弥男爵から献上された初加勢(はつかぜ)号がある。スピードを重視した細身の2本マストの汽船だった。全長:31m、80総トン、蒸気機関:230馬力、速度:11.38ノット。運航は諸外国に準じ、海軍の手に委ねられた。
昭和は戦争の時代だった。ロイアル・ヨットどころではない。まぁ、現人神では遊べないということもあるが・・・。
戦後、国の象徴となってしまった昭和天皇は海洋生物の研究のために葉山に「はたぐも」号という名の木造白塗りのモーター船をお持ちだった。海に出るときは漁港につながれた船を係員がご用邸の浜まで回航し小舟で移乗されたという。これもロイアル・ヨットとはとても言えそうにないなぁ。
もう時代はロイアル・ヨットではなく日の丸をつけたジャンボになってしまったのでしょうね。そういえばもう少し小さめの専用機が欲しいなどいつか偉い人が言っているのを聞いたことがある。
【関連記事】:Yacht 「Whale Song 」(ホエールソング)
【参考資料】:ロイアル・ヨットの世界 小林則子著 文春新書
by pac3jp | 2008-11-07 11:15 | 特殊船