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サーマルカメラ(赤外線暗視カメラ)は要りませんか?

 先の三連休はハーバーのビジターバースでモーターボートだけのボートショーが開催されていた。豪華ボートは割りに少なく、フィッシングボートの展示が多いように見えた。そして、殆どが試乗可能なので好天にも恵まれ大勢のお客さんで賑わっていた。

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 ボートビルダーは旗が好きですね、桟橋がより賑やかに見えます!!

 陸上の展示ブースは古野電気やマロールなど常連さんの他に今回はプレジャーボート用の赤外線暗視カメラの展示をしている会社があった。アメリカのサーモグラフシステムなどのメーカー、FLIR(フリア)社が製造した「ナビゲーターⅡ」である。デモ機はジョイスティックで操作するリモコンタイプだ。表示装置はfurunoのナビネットのディスプレーに画像を表示させていた。

c0041039_15403353.jpg 作戦中の兵士が使うらしい軍用の暗視装置は映画で見たことはあるが、なぜ、プレジャーボートに暗視カメラが必要なの?と営業マン氏に聞くと、「このサーモカメラをブリッジに設置すれば、日夜を問わず水面に浮いているゴミやさまざまな漂流物、浮標や定置網のブイ、マリーナや港湾などの夜間入港は勿論、他の船舶などを確実に判別できるカメラシステムで、光が全くない夜間はもちろん、激しい雨や多少の霧程度であれば不安を覚えることなく航行できるはずです」そして「最近では岡山のヨットにも設置していただきました!」と、おっしゃる。

 夜間や雨中など視界不良の航行は、遠方ではレーダーが有効だが、目標に夜間接近すればサーチライトの出番である。なにも赤外線カメラの必要はないように思うが、レーダーや目視で確認できない場合もあるのでそれなりの意味はあるのだろう。

パンフレットを読むとサーマルカメラの表示には4つの表示モードがあり、
1.昼間航行モード
2.夜間航行モード
3.落水者救命モード
4.夜間着岸モードがあるという。

 役に立ちそうなのは落水者救命モードと夜間着岸の場面だと思うが、かなり大勢のクルーが乗り組む船でなければ難しそうだなぁ。でも、2倍のズームもついているので防犯カメラ?としては役立ちそうですね。

 そもそも、このサーマルカメラは世界各国の警察やコーストガードなどが落水者を捜索救助する装置として使われているのと同じ仕組みということで、海面と人体の温度差をセンサーが検知しモニターにその画像を表示できる。そしてジャイロと複数のセンサーを使い船が動揺しても目標を連続して表示することも出来るらしい。

 費用対効果は後で考えるにしてもまず価格が問題だが、プレジャーボート用でデモ機と同じ仕様の
●リモコンタイプの「ナビゲーターⅡ」 価格:1,331,759円
 (消費税、送料、取付工賃、モニター含まず)
 となっている。工事を含むと200万円以上はしそうだ。

●固定タイプの「ナビゲーターⅡ」 価格:756,899円
 (消費税、送料、取付工賃、モニター含まず)

 まあ、使用頻度から見ればかなりお高い装備ではありますが、フネの安全装備にお金をかけるのは正当な支出なので決して無駄ではありませんよ、メガヨットなどはもうとっくに装備されていることでしょうね。
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by pac3jp | 2009-10-14 15:44 | ヨットの艤装と艤装品  

救命浮環のリードロープの収納

c0041039_17545460.jpg シーズンオフのヨット整備のうち、まず手近なところでこんなのはいかがですか。

 クルージングヨットには法定備品である小型船舶用救命浮環が必ず装備されているはずだ。係留中は船内やコクピットロッカーに収納しているフネも航行中にはコクピット付近のすぐに投下できる場所にセットされていることと思う。


 あるとき、ヨットに慣れないゲストクルーがバランスを崩し落水してしまった。

 早速救助のために救命浮環を投げようとするが、リードロープがコイルしてあって、スルスルとうまく解けない。スキッパーから早く!の声が掛かるが、焦ると余計こんがらってしまう・・・。

 そんな時、上の画像にあるようなペットボトルに浮環のリードロープを押し込んでおくと便利です。ブイを掴んで投げるとペットボトルの口からスルスルとPPロープが繰り出してくる。そして落水者を素早く救出できるチャンスをつくることができる。

 これはハーバーの桟橋入口に掛かっているいる救命浮き輪からアイデアを頂きました。木工や金属加工は苦手なヨットマンもペットボトルにロープを詰めるくらいは朝飯前だろう。簡単な割には効果はありそうに思いますがいかがでしょうか。
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by pac3jp | 2008-12-28 17:58 | ヨットの艤装と艤装品  

海上でヨットを捜す

 土曜日の夕方、ハーバー沖からスタートしてオーバーナイトで大阪湾を一回りし、日曜日にフィニッシュするレースがある。
 結構な人気みたいで、普通のレースより多めの艇数が集まり、週末の夕方一斉にスタートしていった。

 お天気は穏かで夜には雨が降っていた。

 朝、7時前にファーストフィニッシュのヨットが帰ってきた。風は落ちてしまい、ほんの微風になってきた。2着は純レーサーではない大型ヨットが帰ってきたが様子からみてどうも棄権したようだ。
 8時をすぎると2着の48fの純レーサーがフィニッシュしハーバーの中までセーリングで入ってきた。
 その後、ポツリ、ポツリと帰ってくるが、ボクの仲間がお二人出場しているホワイトセール組のヨットの姿はない。そのフネの1隻はご自分の38 fで、もうお一人は40fにクルーで乗っている。

 トップがフィニッシュしてから3時間が経った午前10時前、彼等の大まかなポジションが分った。まだゴールまで25マイルもある海上で大きなカームに掴まり弱気を吐いていた。

 そこで、機走の早いヨットで応援に行くことが直ぐに決まった。

c0041039_11224980.jpg 沖の海面は風弱く、視界は2~3マイルくらいと少々悪い。8ノットで南下を始める。一文字付近で2隻の大型レーサーが微風のスピンランで苦労しているのが見える。

 2時間ほど航行しながら視界に現れるヨットに近寄り捜すが、広い範囲に散らばったレース艇を勘で捜すのは不可能だ。ケータイで連絡を取りGPS座標を知らせてもらおうとするが、ケータイの電波が届きにくく通信が途切れる。ドコモもこの頃は海ではつながり難い。やっと相手のGPS位置をもらい、入力する。方位と距離が出るが、まだ4マイルも南だ。

 「30分か・・・しゃーないな、いこか!」とまた走り出す。暫く進むが何も見えてこない。GPS座標が違っていたのかと、再度相手に確認すると、間違いない。視界の悪い中、前方かすかに4隻くらいのスピンを揚げたヨットが見えてきた。

 海面は西風が吹き出し、各艇アビームで快調なスピンランになっている。目指すヨットの特徴を確認しようとするが肝心の双眼鏡がない。ちょと頼りない肉眼でみるとどうもこのグループに仲間のヨットはいないと結論つけたが、スピンの色で再度確認すると、もう既に行き違ってしまった。折角ここまで来たのに、捜していた相手は我々の声援が届かない遥かむこうの海にいた。

 早速、最大速力で後を追うが、彼がこの日のために新調したライトスピンが威力を発揮して8ノット以上で飛ばしている。レース中なのでちょっと待ってくれともいえないので、風が弱くなるのを期待?して後についていく始末となった。

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 視界と通信環境は多少悪いが、双方ともGPSがあり海上での会合も割合簡単だと思っていたが今回は残念ながら果たせなかった。
 理由の一番は双方が移動していたこと。そして、相手のGPS位置から方位と速度の情報をもらわなかったことだ。
 二番目は視野に入った相手を確認する情報と道具(双眼鏡)の手持ちがなかったことがあげられる。

 そう考えると大阪湾中央部でも、もし荒天時の夜間に落水者を出し救助要請をしてもケータイはうまく繋がらないし、海上の視界は悪い、大きなヨットでも見えないのに人間など見えるはずはない。手順ではヨットから自己点火灯をつけたライフブイや落水ポールを投げ入れる。クルーはライジャケにストロボライトをつけている。でも大波でヨットからは直ぐに見えなくなってしまうだろう。

 こういう事態になればやっぱりPLB(personal locator beacon)が有効だろう。ライジャケのポケットに入ほど小さくて、ストロボとGPSを内蔵して捜索機関に406Mhzで衛星経由で位置情報を、ローカルでは125.1Mhzでホーミング用のビーコンを送ることが出来る。
 アメリカでは500~600$台くらいで市販されているが日本ではまだ使えないらしい。山では雪崩事故に備えてビーコンなど前から使っているというのにね。

【参考Web】West Marine:PLB
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by pac3jp | 2008-06-11 11:24 | シーマンシップ  

関西国際ボートショー 2008 (2)

 毎年、春のボートショーでは輸入された高価な新型ヨットを見るのを楽しみにしている。自分で買って乗ろうとは思わないが、デザイナーとビルダー、それに艤装品メーカーが智恵を絞って考えた新しい船型や艤装品を見るのは大いに楽しい。
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 今年も新艇の出展は少なかったが、久し振りにドイツのデヘラー34が出てきた。デヘラーヨットの新艇はいつも新しいモノが付いているので桟橋からよく観察すると、船型は今頃はやりの形で以前のモデルと比べるとかなりボリュームがある・・・あれっ、デッキには何かありそうだ。
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 バウデッキにファーレックスの新型ファーラーが装備されていた。ファーラーの巻き取りドラムがデッキ下に取り付けられたタイプだ。一般的にこのタイプはフォアステイがデッキを貫通している部分は大きな穴が開いている。でも、この新製品はデッキ貫通部分はベアリング付き?のフランジで保持されている。フォアステイのタック部分がすっきりと収まってファーラーが付いているのを感じさせないスマートさがある。
 左画像はファーラー部の外観、右画像はコントロールロープの取り回し。ブロックが2個入っているので多少重いかも。
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 バウパルピットに小型でカッコいいLED両色灯 LOPOLIGHT製(1NM用)が付いていた。(↑左画像)
 船尾灯も同じデザインのLED船尾灯だ。(↑右画像)
 ちなみにマストトップにつける全周灯は日本の規格に合格しないので桜マークのKOITOをつけているとディーラーからお聞きした。
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 サイドデッキにバタフライタイプのセンタークリートを発見した。よく見れば舫いロープが掛かったクリートも当然同じタイプのクリートだ。デッキのクリートはシートが絡んだり蹴躓いたりするので、専用ガードをつけたり、テープでカバーしたりする。ボートには沈下タイプのクリートなどがよく装備されているが、ヨットでは頑丈そうなこのタイプの方が良さそうだ。

c0041039_13214484.jpg 画像はスターンに装備されたラダーステップ。不幸にもヨットから落水してしまい、ヨットに戻れなくなった時、水中からラダーステップを降ろせる仕掛けの有無がそのヨットマンの運命を左右する。
 これは画像を見ても分るが、水中からでも引き出せる伸縮タイプの梯子である。海水の冷たい時期、ハーバー内の落水事故で助かる確率は確実に上がるでしょうね! ただ、通常に降ろす場合に落ちそうになる恐れも・・・。

 結局、デヘラー34の見学はデッキを一回りしただけでコクピットもキャビンも入らずだった。従ってヨットの帆走性能も値段も聞かずにヨットを降りた。印象ではクラブレーサーらしかったが、クリートなどヨットの隅っこしか見なかったので全体はよく分らなかった。でもボクはこれで充分楽しんだ。
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by pac3jp | 2008-03-26 13:32 | ウオッチング  

救助梯子(SAFETY LADDER)

c0041039_13355463.jpg ヨットハーバーのセンターハウスの正面あたりの桟橋に3ヶ所「救助梯子」と書かれたプレートが桟橋床面に張ってある。桟橋の下を覗くとなにやら折りたたんだ非常階段のような装置が見える。落水者が赤い取っ手を引くと梯子が水中に降りてくるのだろうか。
(下の画像です)



c0041039_13381274.jpg ボクは前からハーバーの桟橋から落ちたらSバース以外はそう簡単に桟橋に上がれないなと思っていた。実際に落水した人からお話しを聞くと皆さんが想像以上に力が出ないという。ボクの友人もよく落水する人がいるが大抵はお酒を飲んでフネから降りるときに落水している。通路桟橋から直接落水した人はたった一人だけだ。そうだ、ヨットは一時着岸はしたのだが風に流され、ご本人は短い舫いを握ったまま落水した人もいた。この人は勿論、素面(シラフ)だが全くのヨット初心者だった。

 ボクの目撃したハーバー内落水者はほとんどヨットと枝桟橋の間で海へ落ちた。普通に桟橋を歩いていて落ちるのは一人もいなかった。
 でも、いま救助梯子が設置されている場所はただの通路桟橋だ。ここから落水する人はまずいないだろう。でもこの梯子から10m以内のフネにはメリットはありそうだが・・・でもそこまで泳げたらの話だけどね。

 ハーバー内での落水対策ならば串桟橋1本に1台又はヨット・ボート2隻に1台の救助梯子は必要だと思う。でもハーバー会社は数百台もの救助梯子を装備する予算は無いとおっしゃるだろう。

 なぜ、3台だけあの場所に取付けたのか理由は知らないが、まぁ、当分は自艇のスイミングラダーのリリースロープを作るなり、自前のラダーを桟橋に付けるとか自助努力で行くしかないね。

以前の記事から:
1.もし、桟橋からおちたら!
2.もし、桟橋からおちたら! Part2
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by pac3jp | 2007-07-30 13:43 | ウオッチング  

もし、桟橋から落ちたら! part2

 不幸にして人通りのない桟橋やシングルハンドで航海中に落水してしまった時、トランサムラダーを使って自艇に戻れる仕組みを考えてみたが、クラシックなヨットやトランサムにウインドベーンやその他の艤装品が付いていてラダーそのものが付いてないフネもある。
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 上の図はアウトラダーのヨットに縄梯子を使ってデッキに揚がるシステムである。スターンデッキ付近のライフラインに片方の口が開放されたバックに畳んだ縄梯子を収納し、取り付ける。縄梯子の一端はヨット側のスタンションかなければ付近の適当な場所に取り付けたパッドアイに取る。
 もう一端は引き綱としてウォーターライン位までループに下げ、丈夫なステーや金物に取り付ける。この発想は割合ポピュラーなものだろう。ボクでもそうしようと思うからね。でも実際にやってみての細々したノウハウが必要なこともある。

 海面から縄梯子の引き綱を引くと、バックから縄梯子が降りてくるが、ハシゴのエンドの横木は重めの材料で作り、引き下げた時にハシゴが上手く下がり水中で安定するように作る。また、引き綱には小さなフロートをつけ海面に流しロープが沈まないようにもする。

 桟橋から落水してフネに戻るだけなら1組でも良いが、ヨットが航海中の落水事故に対応するなら両舷にこの装備が必要である。そして時々は落水訓練をして装備の操作に慣れておくことも必要でしょうね。

 もし貴方のヨットで試してみようと思ったとき、縄梯子のロープだけは伸びない高級なロープを選ぶ事をお勧めする。間違ってもホームセンターで売っている安物の3ツ撚りロープは使わないように。ご近所で伸びてしまって登れなかった縄梯子を見たことがあるもんで・・・。

参考:以前の記事 「もし、桟橋から落ちたら!」
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by pac3jp | 2007-01-24 10:29 | ヨットの艤装と艤装品  

もし、桟橋から落ちたら!

 寒い時期にハーバーの桟橋から落水すると大変だ。水温も低いし、厚手の防寒衣料を着用している場合も多いので海水に浸かってしまうと思うように身体が動かない。夏には何とか攀じ登れた桟橋も海面に近い舫いロープまで足が上がらないのだ。救助を呼ぶにも休日ならば桟橋に人影もあるが、冬場のウィークデイでは万事休すだ。でも何とか「自力」で海面から37cm~50cmはある桟橋に上がらなければならない。

c0041039_115072.jpg そんな状況になったとき、自艇側の効果的な装備はと考えていると、古いクルージングワールド誌(※1)からスターンのラダーステップを降ろす←左の記事を見つけた。
 スターンパルピットと直角に交差するラダーにハッチピンで固定するのだ。画像は1ヶ所だが不安なら両側に金具を取り付けて海面まで届く細いロープを繋いでおけばいいのだ。スターンがワイヤーで結ばれていても同じように出来ると思うが心配ならその部分のみパイプを入れてもいい。
 万が一、桟橋から落水してしまったら慌てずヨットのスターンにまわり、このロープを引けばラダーがバシャと落ちてくる。このハシゴなら少々着膨れした衣服が水に浸かってもデッキまでは上がれるだろう。

c0041039_1142638.jpg こんなラダーステップのトリップシステム?がシングルハンドの航海中にも有効だよという記事(※2)も見つけた。タイトルは「シングルハンドのラストチャンス」とある。航海中に不幸にして落水してしまったら、予め船尾から流している5m程のラインになんとか掴まり、スターンまで行き、ラダーステップを外す。その際ステップに連結された細いロープがオーパイの解除ピンを抜きヨットを止めるというシステムだ。
 機帆走の場合は流したロープが不注意でプロペラに巻き込んでしまう危険もあるが、セーリングでは問題ない。
 フネから落水しない装備をしっかり付けることが大前提だが、用意周到なこんな仕掛けも大切だね。


 
 桟橋からの落水は酔っ払って落ちることも多いが、艇の発着作業中にもよく発生する。自分のバースの周りをよく観察して安全に桟橋に戻れる場所を見つけるか、あるいは密かに専用のラダーを設置するかだが、ヤッパリ一番有効と思えるのは明日からスポーツジムに通いマシンで筋力を鍛え、もし落ちても軽々と桟橋に上がってくることだろうが、実はこれがボクには一番難しいのだ!・・・いや不可能かも。

【参考】
(※1):CRUSING WORLD Sep1996
(※2):クルージングアイデア101 舵社
以前の記事から:「ポンツーンの高さ」
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by pac3jp | 2007-01-10 11:13 | ヨットの艤装と艤装品  

処女航海 原 健著

c0041039_9115084.jpg 1997年4月、高知沖の太平洋でレース中の南波 誠さんが落水して行方不明になってしまった遭難事故は多くのヨットマンの記憶に残っているだろう。彼は経験も技術も日本のトップクラスのヨット乗りだった。また当時、神戸ではそう荒れた天気でもなかったので、ボクもテレビのニュースを見てビックリしたものだった。当時は詳細に報道されていたが、いまや、ボクの記憶も大分曖昧になってきた。

 その南波さんが落水した時の状況を、同乗していたプロヨットマンの原健さんが書いた本「処女航海」の中で見つけた。

 以下にその時の緊迫した状況をご本より引用させていただく。



・・・黒潮の流れと真向かいになる北東風はすでに30ノットを越え、
潮の流れと相まって体感する風速は40ノットに達する勢いとなっていた。
そして、波高はビルの3階ほどに大きくなり、艇の危険が確実に迫っていた。

・・・デッキ上でまだライフハーネスを装着していなかったのは南波と僕の
二人だけだった。・・・

それまでは規則的に前方から襲ってきた波に加え、突発的な横波が出だした
のは・・・。
一度、二度と突き上げるような波の塊が左舷から攻撃してきたかと思うと、
三度目の凄まじい横波が、爆発のような音とともに艇の横腹に炸裂した。
ロープで身体を縛っていたために、かろうじて艇に留った僕は咄嗟に前方に
目をやった。すると舵輪を握っていたはずの南波の姿が無くなっていた・・・。

反射的に艇の風下を見ると、大きく傾いて半ば水没しかけた右舷後方の安全索
に必死にしがみつく南波の姿があり、その姿はほとんど海中に呑み込まれよう
としていた。僕は自分の身体を縛っていたロープを急いでほどくと、スキーの
ジャンプ台のごとく急角度に傾いたデッキを風下方向に向かった。しかしその
時、舵取りを失った艇は風上へと方向転換し始め、水没していた右舷が水中か
ら起き上がり始めた。
あと50センチ・・・・差し伸べた僕の手が届く一瞬前に、南波の手は艇を離れ
ていった。

「南波さんが落ちたぁ!!」
僕は力の限り叫びながら、救命ポールを海に投げていた。そして、舵手を失っ
た艇は怒濤の波の中で闘牛のように暴れ始めていた。
僕が舵を取り直す頃には、風位を超えて勝手に方向転換を完了していた艇は、
右舷からの裏風を孕み大きく逆に傾いており、左舷デッキに腰を下ろしていた
数名のクルーたちが水中に没しかけていた。そこで、デッキ中央に唯一残って
いたクルーに前方のジブセールのロープを外させた。すると、艇の傾きが無く
なり、左舷で水没しかけていたクルーたちがデッキ上に戻ってきた。

「南波さんが落水した!メーデー信号の発信と落水地点をGPSに落としてく
れ、それにエンジン始動とメインセールのダウンだ。そしてたのクルーの人数
を確認してく!」僕は強風ではためくセイルの轟音の中で、叫ぶように指示を
だした。エンジンが掛かると舵の利き出した艇を風上に立ててメインセールを
下ろし、GPSを頼りに南波の落水地点を求めて風下へと方向転換した。

「他のクルーは全員います」
という報告が届く頃には、艇は風下へ向かって大波に乗り、凄ましいサーフィ
ングを始めていた。決壊した川のように水が氾濫する前方のデッキでは、ジブ
を下ろすという厄介な作業が待っていた。そして、ベテランクルー3人によっ
て慎重にその作業が行われた。2次、3次の落水者を出すことだけは避けなけ
ればならなかったのだ。
無事作業を終えるとエンジンのみでの機走によって南波の捜索が始まった。
GPSを頼りに落水地点を何度も何度も通り過ぎながら、南波の名前を呼び続け
た。そしてちっぽけな一葉の枯れ葉のように漂い続ける艇の上で、僕たちの喉
は、時間の経過とともにカラカラに渇いていった。





 この事故の経過を見ていると

1.落水と同時にマークとなる標識ポールを投げる
2.メーデー発信とGPSのMOB(マン オーバー ボード)キーを押す
3.エンジン始動・2次、3次の落水者を出さないような慎重なデッキ作業
4.セールダウン・他のクルーの確認
5.GPSによる捜索開始

 手順通りではあるが、もし自分がこの艇のスキッパーだったらチャンと出来るだろうかと思う。皆さんGPSのMOBキーを押して素早く落水地点に戻れますか?MOBてなに?とおっしゃるヨットマンも多少はいらっしゃるでしょう。ご自分のGPSで確認して置いてくださいね。

 この事故は残念ながらヘルムスマンが荒天航行中にハーネス未着装だったことだったが、ヨットから落水し、行方不明になってしまう事故はクルージング中にも、いつでも起りうる事故である。そのためにも、まずクルーの安全意識を上げる事。そして落水しないように艇の安全装備を充分に整備し、もし落水者が出ればすかさず救助するために日頃から救助訓練などが欠かせないと思われる。
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by pac3jp | 2006-10-23 09:20 |  

落水者救助訓練をやってみました!

 先週末、港外で仲間のヨットと2隻でライフスリングを使っての落水者救助訓練をやってみた。海上は西の風、15~16ノット、小型の三角波があり訓練には絶好の海面だ。予定では実際にクルーが落水者になるはずだったが、波のある海で怪我をさせてもいけないので、しずく型フェンダーに錘を付けたものをダミーに使うことにした。我艇にはクルーと見学兼お手伝いのお仲間8名が乗り込んだ。同じく僚艇は6名が乗り組み、エンジンを使って落水者を救助する方法で訓練を行った。
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ボクはクイック・ストップ法でセーリングから帆走で落水者を救助する方法にトライした。

1回目
落水!の声と同時に馬蹄形浮環を目印に投下。続いてライフスリングを投下。ヨットの舵を風上に切り、ジブに裏風を入れながら風下へ。ライフスリングのロープは40m程の長さだ。でも以外に早くヨットは回転してしまう。やがて、落水者にライフスリングが届く前にヨットとスリングのロープが交差し、ヨットの下にロープが入ってしまい1回目の救助は失敗。

2回目
落水!からライフスリングの投入までは同じだが、スリングのロープを少し短めに、救助するヨットの回転半径を1回目より大きくして充分の長さでスリングを曳くという感じで流した。これは良かった。ライフスリングが上手く落水者に届き落水者を確保できた。
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 だがこの後、ジブのファーリング、メンセールのセールダウン、落水者の引き上げ作業となる訳だが、その場面はハーバーの桟橋に繋いだヨットでやってみた。

 引き上用のリグは長さを決めたスピンハリとそれに取り付ける3パーツのテークルセットだ。

 ライフスリングに確保した負傷した落水者を艇に引き寄せ、まず、ミズンのクリートにスリングのロープをクリートしその後、引上げ用のフックをスリングのD環にかける。テークルセットはシートウインチにスムースに巻き取れるロープ角度になるようにスナッチブロックで調整する。画像では75kgの男性を女性一人で容易に引き上げられた。
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 見学者からウインチで巻き上げるのならスピンハリ1本で吊ったらどうだとの意見があり、体重32kgの子供を吊ってみたがスピンハリのロープ摩擦もありウインチ作業はかなり重い。カッパを着た70~80kgの男性をスピンハリ1本で吊り上げるにはチョット不可能に近いと思う。

 ここでも注意力不足で数点のミスがあった。

1.スピンハリのスナップシャックルとテークルセットを繋いだがスナップシャックルのロックが甘くテンションが掛かると外れてしまった。

2.落水者をヨットに引き寄せたときにクリートしたスリングロープを外すのを忘れ、ウインチを巻き上げ、D環につけたスナップフックが破損した。

 以上、落水者救助訓練の概要報告だが、実際やってみて多くの教訓を得たが全体の印象はこのように自力でデッキに戻れない落水者をショートハンドで救助するのは中々難しいなと思った。が、決して不可能ではないことも判った。各艇のオーナーとクルーが定期的に落水者救助訓練を実施して自艇の安全装備の取り扱いに慣れ、非常時の操船方法が上達してくればやがて、女性パートナーが負傷した男性スキッパーを救助する事も充分出来るはずだと思っている。

 また、救助法も何種類もあるので試してみて、自分にあった方法を選んで練習するのが上達の早道かもしれない。
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by pac3jp | 2006-09-13 08:57 | シーマンシップ  

落水者救助グッズ(ライフスリング)

c0041039_8502027.jpg ヨットからの落水は絶対防がなくてはならないが、不幸にして、落水者が出た場合は捜索して救助しなくてはならない。その為の装備が各社から売り出されている。

 落水したクルーをヨットに引き上げるのも大勢のクルーが乗っているレースボートではクイックストップ法など手順も確立し、手も足りているが、クルージングヨットでは二人乗りも多く、男性クルーが落水すれば女性がデッキに相棒を引き上げなくてはならない。
 我艇はライフスリングをスターンパルピットに取り付けているが今度、実際に落水救助の訓練をしようということになっている。

手順、方法は(JSAF 外洋 特別規定 2005~2006から抜粋)を参考にし、自艇にあわせて変更使用させていただいた。

 クイックストップはその手順の1箇所を変更すれば、相棒が落水してしまったシングルハンダーにも使える。それはライフスリングという馬蹄形の浮器と持ち上げ用のスリングを兼ねたものを用いることである。ライフスリングは艇の全長の3~4倍の浮くロープを付けて、艇に取付ける。もしクルーが落水したら、次の手順で行なう。

落水者を確保する

1.すぐに艇を風上に切り上げながら、クッションや他の浮くものを投げ込む。艇速を落とし、艇を止める。

2. スターンパルピットにつり下げたライフスリングのバッグの蓋を開け、スリングを投げ込む。するとスリングは艇のスターンに追随しながら残りのロープが引き出されていく。

3.いったん投げ込んだ後はスリングは艇のスターンに追随するので、艇を落水者の周りを大きく回るようにする。ジブは風に立った状態でも面倒を見ず、裏風が入ったままにしておくこと。これは回転半径を小さくする。

4.スリングは艇が回転することによって内側へ行こうとするのでスリングとロープは落水者の手元へ届く。届いたら、落水者はスリングを頭の上から被り、腕の下にする。

5.スリングが落水者の手元に行ったら再び艇を風に立て、ヘッドセイルを巻き込み、メインセイルも急いで降ろす。

6.艇がゆっくり風下に流される間にクルーはスリングを引き落水者を引き上げる。この段階ではコックピットのウィンチも使える。引っ張ることは落水者が艇に届き、スリングにつるされるまで続けること。

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落水者吊り上げ用リグの使い方

1.なるべくなら風上側の、ミッドシップからクォーターのクリートかウィンチが使えるところで、スリングについているロープで落水者を引き上げる。

2.必要であればウィンチを使ってロープを引き、落水者の頭と肩を水面より上に出してクリートする。これで落水者は安全である。

3.3ないし4パーツのテークルをスピンハリヤードにつける。それを約3mまたは落水者をライフラインの上まで持ち上げるのに必要な、あらかじめ決めた高さのどちらかをマークしておき、そのマークまで引き上げハリヤードをクリートする。

4.下のテークルをスリングのDリングを通っているループにつける。

5.テークルの端のロープをシートブロックかデッキにつけたスナッチブロックを通して、コックピットのウィンチまで持っていく。ウィンチを回して落水者を持ち上げる。

 このライフスリングを使うには少しだけ準備をしておく必要がある。まず、使うハリヤードをあらかじめ決めておき適当なマークをしておく。3~4パーツのテークルを用意し、他の目的には使わないようにしておく。使うスナッチブロックを決めておき、最良の取付位置(ロワーステイタンバックル下)を決めマークしておく。ハリヤードで直接人を吊り上げるのは動物的な力が必要であるが、この装置を使えばずっと楽に持ち上げることができる。

 今度海上で実際にやってみるが、多分文章で書いてあるようにスムースには行かないだろ。でも何事も経験だ。やってみて自分のフネにあった方法を見つけようと思っている。
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by pac3jp | 2006-09-06 09:02 | シーマンシップ