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樟(クスノキ)

c0041039_11123396.jpg いつだったか、それは台風のあとだったかも知れない。いつもお世話になっている船大工さんが水路の奥に吹き寄せられたゴミの中からキズだらけの木材を拾って喜んでいた。

 どうしたの?とお聞きすると「クスノキ」や、これは“銘木”で買ったら高いんやでとおっしゃる。そんな丸太の切れ端は時化が続いたあとの海岸に行けば幾らでも転がっているのにと、まだ和船の知識に乏しかったボクはそう思っていた。

 わが国は神話の時代から、スサノオノミコトが木の使い方についてこう教えたという。「桧は端宮(みずみや:宮殿)に、杉と豫樟(くす)は浮宝(うきだから:舟)に、披(まき)を奥津棄戸の臥具(おきつすてどのふしぐ:棺桶)に使え」といっている。

 この前、テレビ番組で韓国の遺跡から発掘されたお墓に槙が使われていたことから、この被埋葬者は倭人だろうとあちらの学者が言っていたなあ。

 縄文時代は石器で柔らかいカヤやスギを刳りぬいて丸木舟にしたが、鉄器が使えた古墳時代以降の刳り舟や準構造船は耐久性の良いクスノキが使われてきた。

 その後、和船に興味が出てきて博物館で復元菱垣廻船などを見ていると杉は当然で、重要部材に樟や欅が使われているのを発見する。

 近世の弁才船の船材について書かれた史料によると船体部分の航(かわら)、中棚、上棚などは樟・杉・欅が上木で、栂・樅・松・桂・椎は下木である。杉は白太を除き、松は樹脂の多い肥松を使えば上木だ。
 戸立(トランサム)は樟・欅、みよし(船首材)は樟・欅、床船梁は欅が良い。大きく長い材は松・杉を、巨大な舵のラダーシャフ(身木)には樫、ラダーは松である。また前後の目立つ化粧板には樟が使われていたようだ。(大坂・瀬戸内海の船)

 現代でも和船の伝統を僅かに残すFRPの小型漁船でも係船ビットやアンカーローラーを載せている腕木などにその強さと耐腐朽性を買われて今でも樟が使われていると言う。

 欅も強度がある木材だが甲板などで風雨や紫外線に長時間されされると腐朽してくるが、欅と樟を張り合わせて腕木などに使うと欅の寿命が伸びるようだよ、と大工さんに教えてもらった。
 クスノキなどこれからも絶対?フネで使うこともないボクは、へぇ~、樟の樟脳が効いているのかなと、ただ単純にそう思っているだけだが。

 ちなみに、広島の世界遺産、厳島神社の沖に建つ大鳥居も樟を柱に用いている。


【参考Web】:クスノキ(樟)ウイッキペディアより
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by pac3jp | 2010-03-12 11:21 | 歴史・民俗  

流れ着いた漂着物の所有権は?

 世界遺産の島「屋久島」で運良く1日8時間無料の島内観光タクシーに乗れるチャンスに恵まれた。ガイド兼ドライバー氏は地元の人で副業?として海岸に近い場所で農業をしているという。
 そんな彼が運転する観光タクシーで宮之浦港から出発した。まず、最初の屋久島観光は車で入れて、名前まで付いた巨大な屋久杉がある「ヤクスギランド」から始まった。
 50分コースを案内して貰ったが、その谷筋には立派な屋久杉テーブルが取れそうな太い杉の丸太が大岩に引っかかっている。それもあちこちにある。でも、そのような谷あいにある杉丸太の採集は全島で禁止されているが、大雨が降り、海へ流れ出し、波や風に吹かれて海岸に漂着した丸太は、最初に見つけた人の所有物になるという。屋久島でもその権利の主張は石ころ一個を載せておくだけで良いときいた。

 下の画像は民俗学者として有名な宮本常一先生が昭和34年8月7日佐渡・真更川-鷲崎での撮影したもの。
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 <海ぞいの道ともいえないところをあるいてゆく。浜には流木がすこしうちあげられている。その木の上に石がのせてあるのが目につく。流れ着いたものにこうして石をのせておけば、それは私がひろったのですというしるしになる。<中略>こうした習俗はどこにも見られる。それは全国にわたっている。石をのせた人は誰であるかわからない。もちろん木を失った人もわかってはいないけれども、こうして石をのせておけば、石をのせた人以外にその流木に手をかけたりもっていったりするものはいなかった。そしてそのうちひろったものがもってゆくことであろう。私はこのような習俗を面白いものに思う。しかもそうした習俗が全国にわたっていることである。
 不文の約束ごとが守られることで民衆の社会は成り立つものである。人が人を信じられるのである。見知らぬ人おもそのことによって信じることができた。さびしい海岸であった。人一人見あたらぬ世界である。しかしそこには人の意思は働いている>
(私の日本地図7・佐渡より)

 奄美大島の漁師さんが書くブログ「島魚・国直鮮魚店」の記事の中にこんなお話が出てくる。
2009.02.19 ゆりむん(2)

【ゆりむん】 漂着物
 島の海岸線には多くの”ゆりむん”(漂着物)が打ち上がります。
昨今問題となっている大陸からのプラスチックごみや医療廃棄物などの漂着ごみはいただけませんが、その昔ゆりむんは遥かネリヤ・カナヤ※からの贈り物でした。
 流木等はサイズによって建築材や薪として利用される他、浮き玉やロープ類は漁具の材料として利用価値が高いため、台風や季節風の吹いた後は先を競って海岸を散策しました。
 一見無秩序に見えるゆりむん拾いですがいくつか暗黙のルールがあります。
 二つ目のルールは「第一発見者絶対優先(早い者勝ち)。」というものです(一つ目はコチラ)。
「ゆりむんを見つけ持ち帰ることはできないけど所有権は主張したい。」という場合は、人為的に置いたと分かるよう移動させたり、石を積んだり、ロープを巻いたりと何がしかの意思表示をしておきます。
 それ以後の発見者は決して現状を変えてはいけないし、ましてや持ち去ることなど絶対に許されません(それが島っちゅのモラルです)。

 屋久島でも奄美でもきっと佐渡でもこの習俗は今も生き続けているんだ。

 ボクも子供の頃は播磨灘に面した半農半漁の小さい集落に住んでいた。台風や冬の大西が吹き荒れた翌朝、浜に打ちあがったワカメや木材など漂着物を皆で拾いに行ったものです。今でも台風の後には海岸に行きたくなり、時には埋立地の奥のテトラに引っかかった黄色い俵ブイ(フェンダーにする)などゲットすることもあります。

 残念ながら当時は子供だったので日本人の習俗だったという「石を積んどく」は知らなかったなぁ。今ではそんな砂浜もすっかりなくなりテトラとコンクリートの護岸になってしまい、漂着物ひろいのモラルなんて大阪湾や播磨灘の沿岸ではもうなくなってしまったのでしょうね。

※ネリヤ・カナヤ(ニライカナイ)は、沖縄県や鹿児島県奄美諸島の各地に伝わる他界概念のひとつ。理想郷の伝承。

【関連記事】:迷惑な漂着物 

【参考資料】:宮本常一の写真に読む 失われた昭和 佐野眞一著 平凡社
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by pac3jp | 2009-06-05 09:40 | 歴史・民俗  

迷惑な漂着物

c0041039_1228964.jpg ヨットハーバーの隅っこの桟橋に古びたブイが舫ってあった。近づいて見るとノリ養殖エリアの周辺に設置してある灯浮標である。灯器は既に無く、支持柱は折れ曲がり、浮力体の金属タンクは破れ、浮力はタンクの中の発泡体だけでもっている。かって灯器に電源を供給していたケーブルは海に浸かりフジツボや藻が絡まっている。一見しただけでも長らく漂流してきたブイとわかる。

 ハーバーの作業員に聞くと港内の出入り口に近い波除用の浮桟橋に漂着していたのでこちらに持ってきたという。大阪湾でもこんな大きな物が流れているのだ。ヨットやボートなど小型船ならこれにまともに衝突すると重大な損傷を受けるのは必定だ。昼間ならよく見張っていれば避けられるが夜間ならよほど注意しなくては発見できないだろう。皆さん、見張りは厳重に、オーパイで居眠りは厳禁ですよ!

 漂着物といえば、ボクが子供の頃、台風の影響で海一面に太い杉の丸太が流れ、海岸を埋め尽くすほど漂着した年があった。
 子供たちはその夏、海の遊びは丸太を縄で縛っていかだ遊び、一本に乗ってのカヌー遊びと大いに楽しんだ。波で流れてしまっても幾らでも作って遊んだもんだ。やがて沖に丸太を回収する船がやってきてボク達の夏も終わり、楽しかった思い出が残った。

 また有名なところでは、伊良湖の砂浜に流れ着いた椰子の実を拾った話を民族学者の柳田國男が、その様子を島崎藤村に語れば、「名も知らぬ遠き島より流れよる椰子の実ひとつ・・・」の詩が生まれ、長らく日本人に歌い続けられる歌になった。

 漂着物も分類すれば自然物系、人工物系に分かれるが、海岸近くに住んでいる人は、やっぱりそのまま食べられるワカメや貝など自然物を拾うとうれしいみたい。年配のオジサン達は流木を拾い、根っこを綺麗にカットし、ニスを塗り、アチコチにオブジェで飾っている。それを頂いた我家では植木鉢の台などに重宝しているのだ。
 また、エコな生活を目指す人たちは海岸に流れ着く流木を集め、鋸で挽き、斧で割り冬の燃料として蓄える。運動不足の解消には絶好だとおっしゃてはいるが、薪ストーブを置ける家と大量の薪を貯蔵できる倉庫も必要なのが最大の難点か・・・。

 一方、人工物系では手紙の入ったビンなどは夢があって楽しいが、危険な物が入った容器や漁具の一部、古いブイ、廃油ボールなど迷惑な漂着物もおおい。日本海沿岸では隣国で不法投棄された漂着物のニュースもよく見かける。

 だが、下記の様な漂着物を採集し、その中にある多くのメッセージから環境問題や民俗学的にも考証し、楽しむのを「ビーチコーミング」といい、専門の学会まである。ボクも少し興味がある遊びだ。

◆浮子や漁具  海外の漁具や浮子、ガラス浮子、ルアー、網や船道具など
◆日用品    異国製ビン類、陶磁器やビーチグラス、ライターなど
◆海の生物   魚類、貝類、蟹類、カメ、イルカ、ほ乳類など
◆陸の生物   鳥類・ほ乳類・両生類の遺骸あるいは骨・歯など
◆植物や流木  ココヤシ、ゴバンノアシ、モダマなど様々な種子や流木など
◆その他    軽石やメノウなど鉱物や化石を含んだノジュールなど

 でもボクは海の近くで育ったのでワカメや生きてるタコなど実利的なものが拾えるとうれしいな。今でも時化の翌朝早く海岸を散歩すればきっと「三文の得」はありそうだね。


【参考Web】:漂着物学会(Japan Driftological Society)
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by pac3jp | 2008-04-23 12:41 | 歴史・民俗