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新しい南極観測船「しらせ」を見学する(3)

 海外からやってくるクルージングボートを訪問すると、彼らが過去に航海してきた地域を説明する時必ず地球儀を持ち出して教えてくれる。その地球儀が「ビニールふうせん」やボールなどサマザマで彼らの個性がでていて面白かったものでした。
 しらせのブリッジでも面白い地球儀を見つけた。

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 南極大陸がよく見れるように南北の地軸が横になった地球儀で見学者に航路の説明をされている。こんな地球儀は売っているのかと愚問を発したりしていたが、地球儀で南極をグルット眺めたのはこれが初めてだった。

 そして手持ちの電子チャートでリッツォ・ホルム湾のオングル島を表示してみるとさすがに付近の物標の名称は日本語読みのものが多いのに気が付いた。画像はオングル島付近の図だが詳細図はなかったのが残念だが、▲マークが公表されている昭和基地の座標と合う。左の方に弁天島が見える。付近の水深は50mくらい。(クリックすると少し大きく見えます)

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 定着氷縁から一年氷帯まで27マイルを3日で突破したが、多年氷帯の21マイルは厚い氷と積雪があるので、しらせは一回のラミング砕氷でたった10m~20mしか進出きず、10日を要しながらも弁天島をポートにみて連続砕氷が可能なオングル海峡側から昭和基地に接近したという。(H21.12)

c0041039_14422235.jpg ←画像 ブリッジの背面にヒーリングポンプの制御盤があった。両舷に設置された燃料タンクの燃料をポンプで片方に移動させて艦体をヒールさせて砕氷する装置かなと思っているが、3万馬力で押しつぶす方が手早いのできっと停泊時の結氷対策か予備の手段でしょうね。

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 しらせは輸送業務だけでなく海洋観測支援も業務のうちなので、艦体の揺れを抑える減揺タンクが装備されている。これは砕氷には関係はないが、波の高い外洋での海洋調査を実施するときに艦の揺れを抑える役目で結構大きなタンクが両舷に設置されている。

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 第一甲板の左舷艦尾に小さな危険物タンクが設置されている。良く見るとスタンションの外になっていてタンクの固定装置が緊急時にはリリースされるようになっている。ナゼだろうと思い近くの乗員にお聞きすると、タンクはスノーモービル用のガソリンタンクで、しらせにはたったこれだけの量しか積載していないらしいが、火災になるとこれでも大変危険なのでタンクを海上に放棄するためにそうしてあると教えてもらった。
 確かにガソリンは重油や軽油に較べて引火性が強いので慎重な扱いだなと感心しながら自分がとってきた安易な保管方法を反省したものでした。

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 飛行甲板がある01甲板にはライフボートが6隻ダビットに吊り下げられている。良く見ると吊上げウインチから舷側のスライドガードまで細いワイヤーに繋がったハンドルがついている。ここでライフボートを着水させる作業を操作するのだろうか。どうも電気がこなくても動かせるようになっているみたいなどと勝手に想像しているのだが・・・。

c0041039_1453304.jpg どの護衛艦にも艦名にゆかりのある神様を祭った神棚がある。「しらせ」には富士山本宮浅間大社のお札が祀ってあった。
 南極観測船は宗谷が海保の巡視船だったが、その後は海自が運用するようになった砕氷艦「ふじ」からの伝統で一隻しか持たない砕氷艦の神棚は代々富士山をご神体として祀っている浅間大社になっているのでしょうね。
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by pac3jp | 2011-10-16 15:02 | 特殊船  

新しい南極観測船「しらせ」を見学する(2)

 左舷後部の舷門から乗艦し、一段あがって01甲板の飛行甲板にでる。すぐに大型輸送へりのCH-101が駐機している。護衛艦の哨戒ヘリ(SH-60J)よりもかなり大きい。ポートサイドを見ると窓が5枚あり乗降用のステップが下がっていて乗客もかなり乗れそうだ。スタボー側には貨物の積み込み用の大きな開口部がある。床下には大型の貨物を吊るための太いフレームパイプが見えている。輸送機なのでキャビン後部に重量物の荷役に便利なランプドアもある。

艦戴ヘリコプター CH-101
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任 務:南極における人員、物資の輸送
機 体:全長 22.8m 全幅 18.6m 全高 6.6m
自 重:9.9t
全備重量: 14.5t
最大速度: 270km/h
航続距離: 約850km
最大搭戴量 :機内 3t 吊下げ 4.5t
最大搭戴人員:27名
エンジン:ロールスロイスRTM322-02/08 出力:2,150SHP×3
製 作: 川崎重工(ライセンス生産)
開発者:イギリスのウエストランド社とイタリアのアグスタ社が共同開発し、現在はアグスタ社傘下のアグスタウエストランド社が製造・販売している。

 しらせ本体と同じく文部科学省の予算で3機が購入された内の2機が搭載されている。機体は掃海・輸送ヘリコプターとして導入されたMCH-101と同一の機種で、外観的には機首と尾部のミサイル警報装置の有無程度しか差異は無い。CH-101の方はミサイル警報装置の基台だけが付いている状態である

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 機体後部から見ると、ローター固定具とキャビン後部のランプドア部分が見える。
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 ローター基部と2,150HP×3のエンジン部分

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 ローター先端 変わった形をしている
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 左右にバックミラーが付いている。ヘリには一般的についている属具かどうかは知りませんが、吊上げる貨物の具合を見るのに必要とのお返事でした。

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 飛行甲板と格納庫上の管制室。

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 01甲板の平面図には格納庫に大型ヘリ2機と小型ヘリ1機の計3機の収容される図になっているが説明は2機搭戴となっている。このスペースは南極観測隊が偵察等に使用するヘリのためのもので機体はその都度チヤーターして搭載されている。H21年度はオーストラリアのフリーマントルで積み込まれ帰りはシドニーで返却された。H22年度は日本でチャーターされたので全行程にわたり、しらせに搭載されていた。

 昭和基地への物資輸送に新型輸送ヘリCH-101へのパワーアップと輸送物資のコンテナ化でS-60A(先代)の2倍の輸送能力を発揮し約1週間掛かっていた本格輸送を3日で終了することができたという。
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 空輸第一便を歓迎する昭和基地の越冬隊隊員たち。(H22.12)
 【平成21年度 航空輸送の実績】
 物資輸送  481.8トン
 人員輸送  1678人

c0041039_14472520.jpg こんな光景も・・・南極の夏でもちょっと寒いかもね。(H21.12)

もし、ボクでも若い頃、その場にいたらきっとこの列に並んでいたなぁ!
・・・ホンマか?


【参考図書】:しらせ 小島敏夫著 成山堂書店
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by pac3jp | 2011-10-09 15:03 | 特殊船  

新しい南極観測船「しらせ」を見学する(1)

 2011年9月25日(日)、好天の神戸港第4突堤で開催された四代目の南極観測船である砕氷艦「しらせ」の一般公開に行ってきた。新しいといっても、平成21年5月の就役で、もう2回も南極観測支援の航海をしているがボクは初めての対面だった。

 砕氷艦特有のずんぐりと丸いバウを見ながら、左舷船首付近の受付で金属探知機と手荷物検査を済ませ、艦の後部から乗り込む。

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主要寸法 :長さ 138m×幅 28m×深さ 15.9m×喫水 9.2m
基準排水量:12,650トン
満載排水量:20,000トン
推進方式 :ディーゼル電気推進
軸出力  :30,000馬力
推進器  :固定ピッチプロペラ2軸
最大速力 :19.5ノット
巡航速力 :15ノット
定 員  :乗組員179名、観測隊員等80名

【砕氷能力】 
  連続砕氷 :氷厚1.5mまでの氷海を強力な推進力で3ノットの連続砕氷できる。
ラミング砕氷 :1.5m以上の氷は一旦艦を200m~300m後進させ、最大馬力で前進し、最大11ノットで氷に乗り上げ、艦の自重で氷を砕く。
ちなみに平成21年11月~平成22年4月の第51次南極観測処女航海では3,414回のラミングをしたと記録されている。

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新「しらせ」の特徴
1.船 体
c0041039_9324227.jpg◎砕氷する船首や喫水付近の外板部分にステンレスクラッド鋼を使用して、ラミング砕氷時などにおいて摩擦抵抗を低減。SUS部分は有害な船底塗装が不要になる。
※(ステンレスクラッド鋼とは高張力炭素鋼板にステンレス鋼板を貼り付け耐食性を上げた鋼板 JFE製)

◎融雪用散水装置の採用による冠雪抵抗の低減。ラミング砕氷時に海氷に積もった雪がクッションになり乗り上げ効果が落ちるための対策。

◎二重船殻構造に採用よる海洋汚染防止。

2.機 関 
◎ディーゼル電気推進方式による迅速な前後進切り換え
◎低速域でも高トルクを発揮する推進用電動機の採用
◎4台の発電機による統合給電方式によるライフサイクルコスト及び重量の節減。

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上の図は電気推進システムの図です。(クリックすれば大きな画像で見れます。)
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 4台のディーゼルエンジンが各々の発電機を回し、交流6,600Vの電力を発電し、高圧配電盤を経由して変圧器で交流1,050Vに落とし、電力変換機に入る。ここではコンバータとインバータで推進用モータの回転コントロールに必要な電圧と周波数に変換して4基のモータに供給する。そして左右2軸のプロペラが回転し船が進みます。右の画像はしらせの固定ピッチプロペラと舵板です。

 図には推進モータに接続された「バックパワー吸収抵抗器」があるがこんなものがいるんだと初めて知ったが、回生発電された電気はハイブリット車ならばしっかりとバッテリーにチャージされているのでちょっともったいない気もするが、海には下り坂や「しらせ」は帆船でもないから極まれにその状態になるのかな・・・。

 この日は機関室や操縦室などの見学は不可でコースは船首デッキから最上甲板の艦橋に上る。
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 艦橋は護衛艦などに較べてさすがに広くて明るい、結構な人数が入っているがそう混雑しているほどではない。新しいフネなので航海機器も最新のようだ。気になったのは大きな艦橋窓ガラス制御箱が4面も並んでいたことだ。窓ガラスの開閉ぐらいにこんな大きな制御装置が要るんでしょうかね。でも大きな艦橋の窓は広く極地の環境ではパワーのある装置でないと窓の開閉も出来ないのかもしれない。(つづく)

【参考資料】1:砕氷艦しらせ パンフレット 海上自衛隊
      2:南極観測船と白瀬ノブ しらせ 小島敏夫著 成山堂書店
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by pac3jp | 2011-10-02 10:10 | 特殊船