カテゴリ:特殊船( 37 )

 

地球深部探査船「ちきゅう」が神戸港で修理中

 神戸港、六甲アイランド西側の公共岸壁に高い掘削やぐらが大きなコンテナクレーンを遥かに凌ぐ高さを誇って、遠くから見ても「ちきゅう」が停泊しているのが一目で分かった。
 2006年6月に四突のポートターミナルで一般公開していたので今回もその準備かなと思って近くに行ってみると、オイルフェンスも張ってあり、どうも何かの工事をしているような感じである。前回は都合で見学出来なかったので今回は是非ともと思っていたのに少し残念。

 帰って調べてみると、
今年2月からの始まった「ちきゅう」の中間検査の際、アジマススラスター(船位保持のための360°回転可能な推進機)のギア損傷が判明し、佐世保造船所においてドライドック工事(後部2基のアジマススラスターギア交換)をしたのち、平成20年11月19日~平成21年2月下旬まで神戸港岸壁における工事(残り4基のアジマススラスターギア交換)を実施すると独立行政法人海洋研究開発機構から発表されていた。

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長 さ:210m
幅  :38m
喫 水:16.9m
総屯数:57,087トン
乗組員:150名
速 力:12ノット(巡航10ノット)
海面からの櫓の高さは121mある。

c0041039_8385198.jpg 左の画像はアジマススラスタの作動表示パネル

 「ちきゅう」のDPS(自動船位保持装置:Dynamic Positionig Sistem)は最大で風速23メートル/秒、波高4.5メートル、海上流速3-4ノットまでの環境でその能力を発揮することができ、数ヶ月、長ければ1年間以上もほぼ定点に留まることが可能となっている。このため船底に6個のアジマススラスタとバウには普通のサイドスラスタも装備されていてGPSや各位置センサーから得る情報を元にコンピュータが処理し、各ユニットの動きを管理しながら船位を保ち、長く続く掘削中も全長210mもある大型船が定点から15mくらしか外れないとか。

 「ちきゅう」のパワーユニットは
三井ADD型ディーゼルエンジン:7,170HP×6基 これと連結される主発電機は5,000kw×6基、それとは別に補助発電機:2,500kw×2基があり合わせて発電設備として35,000Kwの出力を持っている。

 因みにアジマススラスターはプロペラ直径3.8mで出力4,200Kwのものが6基あり、ユニット1基の重量は160トン、うち20トンがモーターの重量であるという。(下画像参照) それにバウのサイドスラスタ 2,550kw×1基がある。

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 掘削作業は、海面に浮かぶ船から海底に、太く長いパイプを伸ばし、その中のドリルパイプが海底下約7,000mの深くまで堀り進んで次々とコアを堀り出してゆく作業をするわけだ。本船は定点にいるといっても本当に大丈夫かなぁとボクはそう思うが、深い海ならパイプの揺れはある程度は許容(パイプの長さの5%までとか)されても、浅い海では支障が出るらしく「ちきゅう」は水深500mより深い海で運用することになっているそうだ。

 でもボクの疑問は「ちきゅう」はまだ建造されてたった3年の中間検査の段階で深海掘削船の主要な装備であるDPSのアジマススラスターのギヤ損傷が発生し、今回、約10億円もをかけて修理工事をするわけだが、まだそんなに「ちきゅう」を酷使するほど使ってないだろう。故障がちょっと早いのではと思い調べて見ると、

 中間検査の開放検査で損傷が発見されたアジマススラスタのベベルギア(回転方向を直角に曲げるときに使うギア)には、

●ホイールの歯元に垂直シャフト側(ピニオン)の歯先が接触することなどによるギア表面からの亀裂発生。 (上の左画像を参照)
●浸炭焼入れ深さ不足等による内部せん断応力に対する強度不足あるいはギア内部に介在する不純物によるギア内部からの亀裂発生。

 と、設計・製造上の欠陥から損傷が発生したので現在使用しているギア全て(6基)については、設計変更して新たに製作するギアに交換することとした。と発表されている。

 神戸港で工事が終わった平成21年3月中旬から「ちきゅう」は紀伊半島沖の熊野灘において機器確認、試験掘削等を実施し、その後IODP(※統合国際深海掘削計画)によるライザー掘削を開始する予定だという。

 先に東シナ海のガス田開発などで中国とEEZの解釈などで色んな問題が発生していたが、これからは大陸棚、あるいは深海底に存在する資源などの調査も近隣国に負けず積極的に行い、日本の正当な国益を守り次代につなげてゆかなくてはならない。このIODPの地球環境変動、地球内部構造、地殻内生命圏等の解明などが国益とつながるかどうかは分からないが、全く未知の世界、マントルの奥深くまで新しい発見を求めて頑張って来てください!!

統合国際深海掘削計画 (IODP: Integrated Ocean Drilling Program)とは
日・米を主導国とし、平成15年(2003年)10月から始動した多国間国際協力プロジェクト。現在、欧、中、韓の21ヶ国が参加。日本が建造・運航する地球深部探査船「ちきゅう」と、米国が運航する掘削船を主力掘削船とし、欧州が提供する特定任務掘削船を加えた複数の掘削船を用いて深海底を掘削することにより、地球環境変動、地球内部構造、地殻内生命圏等の解明を目的とした研究を行います。


【関連記事】:調査船 ラムフォーム・ビクトリー号 
【参考Web】:フリー百科事典『ウィキペディア』より「ちきゅう」
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by pac3jp | 2008-11-28 08:47 | 特殊船  

日本のロイアル・ヨット

c0041039_1184143.jpg 今週はじめ、イラクの元大統領フセインのヨットが売り出されたとマスコミ各社から報道された。ロイアル・ヨットで有名なブリタニア号も超大国、アメリカ大統領のプレジデンシャル・ヨットも経費節減のためにずっと前に売られてしまったが、さすが独裁者フセインだ。ちゃんと高価な自分のおもちゃは持っていたのだ。


買い手付く?フセイン元大統領の「浮かぶ宮殿」売却へ (asahi.com 2008年11月4日19時43分)
 【カイロ=田井中雅人】イラク政府のダッバグ報道官は2日、フセイン元大統領が所有していた豪華船「オーシャン・ブリーズ」号を売却すると発表した。全長82メートルで、プールやモスク、ミサイル発射装置、小型潜水艇などを備える「浮かぶ宮殿」の売却価格は3千万ドル(約30億円)になると見込まれている。AFP通信が報じた。
 オーシャン・ブリーズ号は81年にデンマークで建造された。外遊中に国政が不安定化することを恐れた元大統領は、使用することはなかったという。現在、フランス南部ニース近くに係留されている。
 ヨルダンのアブドラ国王の関連企業が元大統領から譲り受けたと主張、英国の仲介業者を通じて昨年、3450万ドルで売却しようとしたため、イラク政府が所有権を主張して法廷闘争になった。フランスの裁判所がイラク政府の訴えを認め、今年7月にはヨルダン側が所有権を断念する書簡を示していた。


c0041039_1192715.jpg 幕末の日本でもロイアル・ヨットといわれる船はあった。それは1858年(安政5)将軍・徳川家定に対して英国のビクトリア女王から全長42mの60馬力・2本マストの蒸気推進ヨット、エンペラー号が献上された。この船は英国王室が日本国王(将軍家)用のロイアルヨットとして建造された船だった。
 せっかくの豪華な贈り物も幕末動乱の時代で将軍にそんな余裕はなかった。幕府は砲3門を持つこの船を「蟠竜丸」として軍艦に転用してしまった。そして榎本艦隊として江戸脱走、函館沖海戦で官軍の朝陽丸を撃沈するなど活躍した。

 また明治3年、政府はフランスからナポレオン三世妃のヨットだったスチールの外輪型スクーナー、ティポール号を灯台巡視船として買い入れ内外の貴顕を招き新設灯台の落成式などに接待している。

c0041039_11222814.jpg 明治8年、日本が計画し英国で建造された2本マストトップスルスクナー艤装を持つ汽船、明治丸(1000トン)が就航する。この船は公式には灯台巡視船として建造されたとなっているが本当はロイアルヨットとして造られていて「灯台巡視船であるとともに皇室用の船として計画された」と記録にある。この船は重要文化財として東京海洋大学に現存する。

c0041039_1110887.jpg 明治35年、大正天皇が皇太子の頃、長崎の三菱造船所に行幸した記念として三菱の総帥岩崎久弥男爵から献上された初加勢(はつかぜ)号がある。スピードを重視した細身の2本マストの汽船だった。全長:31m、80総トン、蒸気機関:230馬力、速度:11.38ノット。運航は諸外国に準じ、海軍の手に委ねられた。

 昭和は戦争の時代だった。ロイアル・ヨットどころではない。まぁ、現人神では遊べないということもあるが・・・。
 戦後、国の象徴となってしまった昭和天皇は海洋生物の研究のために葉山に「はたぐも」号という名の木造白塗りのモーター船をお持ちだった。海に出るときは漁港につながれた船を係員がご用邸の浜まで回航し小舟で移乗されたという。これもロイアル・ヨットとはとても言えそうにないなぁ。

 もう時代はロイアル・ヨットではなく日の丸をつけたジャンボになってしまったのでしょうね。そういえばもう少し小さめの専用機が欲しいなどいつか偉い人が言っているのを聞いたことがある。

【関連記事】:Yacht 「Whale Song 」(ホエールソング)
【参考資料】:ロイアル・ヨットの世界 小林則子著 文春新書
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by pac3jp | 2008-11-07 11:15 | 特殊船  

境港で水産高校の練習船が沈没・・・

 今回四人目の日本人科学者下村さんがノーベル化学賞を受賞すると決まったと、うれしいニュースを見ていたら、境港で隠岐水産高校の練習船が沈没したと臨時ニュースが入った。船名は「わかしまね」といっていたので、もしやと思って調べてみると今年('08)の2月5日に神戸港中突堤に来ていた練習船に間違いなかった。

 当時、船に実習生は乗っていなかったが当直のクルーにお聞きすると航海実習に来ているとおっしゃった。冬の日本海は高校生の訓練には向かないので波静かな瀬戸内のクルージングを楽しんでいるかと思っていた。
 練習船はまだ新造のようにキレイな大型イカ釣り漁船タイプで、作業エリアの木甲板もまだまだきれいなもんだった。
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イカ釣り用 前デッキうえの集魚灯全景と器具の詳細
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壱岐や対馬で出会う小型イカ釣り漁船はスミで真っ黒だがさすがキレイなデッキ。マストトップにはサテライトコンパスのセンサー(左画像)が付いている。航海・通信機器はFURUNOの新型が装備されているようだ。
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「わかしまね」主要寸法
全  長:41.0m
全  幅:7.4m
総トン数:195トン
速  力:12.0ノット
定  員:34名
実習内容:イカ釣り、船釣り

 ところが昨日のニュースによると以下のように報道されていた。

練習船が衝突、沈没…隠岐水産高生ら25人救助 (YOMIURI ONLINE)

 8日午後6時45分ごろ、鳥取県境港市昭和町沖合の境水道で、島根県所有の水産練習船「わかしまね」=196トン、山本克己船長(58)=と、同県隠岐の島町の漁業協同組合JFしまね西郷支所所属の漁船「第22事代(ことしろ)丸」=222トン、花房光男船長(59)ら5人乗り組み=が衝突。「わかしまね」は同7時30分ごろに沈没したが、乗っていた同県立隠岐水産高の実習生13人と引率の教諭ら2人、乗組員10人の計25人は全員、事代丸に救助された。うち実習生ら2人が境港市内の病院に運ばれ、軽いけが。
 境海上保安部の発表では、事代丸の船首とわかしまねの右舷が衝突。わかしまねは船体の右側を下にして沈没し、船内にあった重油約54キロ・リットルなどの一部が流出しているという。同保安部は業務上過失往来妨害などの疑いもあるとみて、両船の乗組員らから衝突時の状況を聞く。


 衝突から沈没までの原因は今後海保が捜査し、海難審判で結論を出すだろうが、この練習船は隠岐水産高と浜田水産高(同県浜田市)が交互に実習で使用し、これからの日本海のイカ釣り漁業などを支える若い人を育てる学校施設だ。
 幸い、全員救助もされたし、境港のすぐ近くで水深10mと浅くサルベージも楽そうに思う。修理して現役に復帰するのも比較的早いかもしれなが、出来るだけ早く学生たちの漁業実習が出来るように関係者の皆さんにがんばってもらいたいものです。

【参考資料】:水産練習船「わかしまね」の概要
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by pac3jp | 2008-10-10 10:39 | 特殊船  

明石海峡に沈んだ貨物船から12億円もかけて油を抜く?

 3月の明石海峡船舶衝突事故のあともずっと油の漏出状態は観測されているがいくつかの調査地点でも、もう油は確認できなかったと発表されている。でも沈没船付近では時々油の波紋が海面に見受けられる状況があり、燃料タンクからの若干の漏油があるので、残っている油の抜き取り作業を「我々の税金」ですることによって2次被害、3次被害を防止できることにつながる。と兵庫県知事がおっしゃる。

 事故の技術検討委員会ではROLS(注1)というシステムを使って油の抜取りをすることが適切ではないかという方向で、しかし、現実に可能なのかを事前に確認をする必要があるので、ROV(注2)という遠隔操作ができる無人の潜水探査機を入れて沈没船を水中カメラ等で確認して次の段階に進めるように約3000万円をかけて事前調査をすることにしたと発表した。
(注1)ROLS:、船体に穴を開ける機器と残油を抜取るポンプが一体となった装置で、遠隔操作により船体に設置して、油の回収が可能なシステム。
(注2)ROV:遠隔操作ができる無人の潜水探査機で水中カメラを搭載している

 そして、この沈船から油を回収するシステム(ROLS)は世界でもノルウェーの会社の1社に1台しかなく、現在ROLSは台湾でベンゼンの抜取りにあたっていて、その後、韓国を経て10月に日本に来る予定だという。12月にはノリ養殖が始まるので工期は2ヶ月足らずだが潮の弱い時期だけの工事になるのでわずかの日数しか取れない。でも費用は12億円以上は掛かりそうだという。

どんな船だろうかと急に興味がわいて来た。

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 ←画像の作業母船はDP船(定点保持機能を有する作業船)でROV・ROLSをコントロールする。ROLSへ電力や熱源の供給、汲み上げた油の管理をする。


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 ↑画像はROVとROLSを使った油の抜き取り作業手順の模式図だ。沈船の燃料タンクに上下2ヶ所に穴をあける(実際は船体外板とタンクの間は空間がある)。上は燃料を抜く穴で下は抜けた後に海水が入るインレットだ。位置が決まるとROLSがマグネットで船体に張り付く。フランジを固定するボルトをタッピングし、パイプが通る大きな穴をあける。分厚い外板は火薬を使う場合もあるそうだが燃料タンクにはドリリングだろう。

 抜き取りパイプが繋がっても水温の低い海底で横たわる沈船のC重油はポンプを回しただけでは汲み取れない。母船から燃料タンクにスチームで加熱したホットオイルを送り込んで加熱しながらくみ出す。ROLSのポンプから母船に送る送油パイプもスチームのジャケットが仕込まれポンプアップを助ける。

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 ↑画像はROLSの外観

 この沈没船には燃料として主機用のC重油とジェネレーター用A重油の2種類のタンクがあるという。両方抜き取るのかどうかは知らないが潮流の激しい水深80mの海底に横たわる沈船からは模式図のように簡単にはゆかないでしょうが、12億円の仕事だしっかりやってくださいね。

 この油抜き取り費用は「外国船舶油等防除対策費補助金」というところから出る。国庫が2分の1負担する補助金だ。残りを関係自治体で分担する。兵庫県は残りの2分の1負担する。あと3市の負担割合は、現在神戸市、明石市、淡路市の3市と相談しているが、県としては、概ね1:1:1の方向で相談しているらしい。1市あたり1億円になるが神戸市、明石市はなんとかなるでしょうが、つい最近市になったばかりの淡路市は大変だろうと思っている。

【関連記事】:掃海艦 MSO-303「はちじょう」

【参考資料】:明石海峡沈没船からの油抜取りに係る事前調査についての知事記者会見(2008年8月1日(金))
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by pac3jp | 2008-08-20 10:24 | 特殊船  

ハイテクロープの「ダイニーマ」

 レーシングヨットには早くから軽くて強いハイテク繊維が使われていた。ケブラーやスペクトルのセール。ケブラー、テクノーラ、ベクトラン、ダイニーマなどのハイテクロープも使われてきたし、最近はカーボンのマストも普通になってきた。

c0041039_9592544.jpg 先日神戸港でダグボートを見学する機会がありバウデッキにあるウインチに巻かれた曳航索がダイニーマであることがわかった。ダグもハイテクロープを使っているんだとちょっと驚いた。

 東京製綱ロープ会社のWebによると、ここ数年、タグラインは従来のロープから高機能繊維ロープ(ダイニーマ)へと劇的な変化を遂げつつあるという。

 以下にそのダイニーマの特徴をあげると、

●高強力、低伸度
品種によりワイヤロープ6×37 B種、あるいはワイヤロープ6×WS(36)IWRC B種と同等の引張強さを持ち、いずれも破断時の伸び率が3~4%でワイヤロープと同等です。
●軽量
比重が0.97と軽量で、ダイニーマのみで使用した場合は水に浮きます。同じ太さのワイヤーロープにくらべ、約1/4の軽さです。
●引張疲労性に強い
安全率=3の繰り返し引張疲労試験で100万回の回数を与えても強度低下はありません。
●耐摩性、耐候性、耐食性が良い
合成繊維ロープの中では最も良好な性能を持ちます。
●キンク、型くずれ
ブレード型で非自転構造ですので、キンクや型くずれが起こりにくくなっています。

 ダグのデッキにいたクルーにお聞きすると今まで使っていた曳航ロープは直径が10cmもあった。強度は同じだがこれは6.5cmで大分細くなって扱いやすいとのこと。
 本船が係留に使っているホーサーとよく似ているので、ただのナイロンロープだろうと思っていたが、同じように見えるエイトロープでもその用途によって材質も大いに違うことがあるのだ。

c0041039_9595517.jpg 画像は日本丸のメインマストの基部である。静索はワイヤーだが動索はすべて三つ打ちロープだ。昔はサイザルやマニラロープが使われていたのだろうが今はどんな材質の三つ打ちロープだろうか。ポリエチレンかポリエステルかそれともクレモナだろうか。
 普通のヨットが使うマッド打ちポリエステルダブルブレードなんて手に優しいロープなどはどこにも見当たらない。

 ボクのクルージングヨットには長さ10m、太さ6mmのダイニーマロープをたった2本だけだが持っている。破断強度は1,600kgもある。もし非常の場合はワイヤーの代わりになるだろうと期待している。でもいつもは日よけシートの支線に使っているが伸びなくて具合がいい。

c0041039_1003368.jpg 陸置きされたレーサーの黒いバックスティ端末が金属ソケット処理されているのを見てどうするのだろうと、前から思っていたがロープ会社では普通のアイスプライスから接着やロック加工など各種のロープ端末処理をオプションで用意しているようだ。
右の画像をご参照ください。
 
 また、黒く光ったバックスティはハイテクロープの上からUV対策で外層にウレタン樹脂を被覆したものだった。


【関連記事】:ハイテクロープのバックステイ

【参考資料】:東京製綱繊維ロープ株式会社
【参考資料】:ヨットロープ
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by pac3jp | 2008-08-08 10:08 | 特殊船  

神戸市港務艇「竜王2」RYUOH2

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総トン数:195.00ton
機関出力:3,600PS
速  力:14.50 kt
所  属:神戸市
建  造:1995/03 金川造船 神戸
装  備:給水装置、消防設備、オイルフェンス搭載

 外観はよく見かける大型のコンテナ船などの入出港をサポートしているダグボートである。バウに大型タイヤの防舷物を取り付け、デッキに大きなウインチが載っている。船体もペンキの剥げたところもなく手入れのいいダグボートにみえる。

 クルーにお聞きすると神戸市の所属だとおっしゃる。なぜ、民間のダグも多いのに神戸市が「竜王2」を運用しているのだろうと疑問に思っていた。
 調べてみると、2~3年前に給水設備を追加し、オイルフェンスも搭載する防災型多機能ダグだったのだ。通常は港湾管理者が船舶に飲料水を提供する「運搬給水」業務についているようだ。以前はもっと小型の給水船があったようだが船舶の大型化で間に合わなくなってきたのかもしれない。それにボクの知っている岸壁の給水所も無くなってしまったし・・・。

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 ブリッジに上がると正面に主機とレックスペラの操作コンソールがある。中央の丸いハンドルが複合操縦ハンドルで、微速から全速までの前・後進、停止、旋回、横進などの操船を正確、迅速に行うことが出来る。隣のレバーは主機のスロットル。右舷側のコンソールはウインチ操作卓だ。

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 少し見難いが川崎レックスペラを装備した「竜王2」のドックでの写真である。
レックスペラは各々が360度旋回し任意の大きさの推力を発生することが出来るのだ。
■プロペラ直径:1.8m 旋回速度:10sec/180度

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 機関室を見せてもらうと主機はヤンマー6気筒1800PSディーゼルエンジンが両舷分2台が据わっている。船尾寄りに発電機が2基、1台は稼動中だった。

c0041039_853131.jpg 主任務の給水設備は船体前部タンクに90トン、船体後部右舷に15トン、同じく左舷に15トンの合計120トンの清水を搭載することができ、80トン/時間の能力がある。画像は潜水艦救援母艦「ちよだ」の給水風景だが、船により給水設備も様々で旧ロシア船籍の船舶などは給水口の口径が小さくて、直接ホースが繋げず細いホースで長時間かけて給水したことあるとのこと。

 また、船によっては船首からの給水を指示され、波や風がある沖の泊地で船首同士をくっつけての給水となり、難しい舫いとりとなるがダグボートの持つ能力を最大限に発揮することでカバーするという。

【関連記事】:港で見つけた格安の自動販売機
【参考資料】:みなと物語「近畿」VOL.13 国土交通省 近畿地方整備局
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by pac3jp | 2008-08-01 08:59 | 特殊船  

消防艇の鐘

c0041039_121283.jpg 船には帆船の昔から時鐘が付いている。これを「カンカン、カンカン」と叩いてワッチの時間を知らせていたが、いまはもう実用には使われず「シップベル」として船のシンボルのようになっていると聞いている。でも、護衛艦なども入港直前にはしっかりと磨いてピカピカにしている。画像は練習船「日本丸」の時鐘だ。これは、まだまだ実用品かもしれない。

 船齢26年の赤い消防艇「くすのき」を見学する。右舷中央の出入り口付近にその「鐘」は付いていたが、もう大分前から磨かれた跡はない。船体のペンキが付着していてどうも「シップベル」というシンボル扱いではないようだ。

c0041039_1223397.jpg 手入れが悪いのかなと思っていたが、消防車にも鐘が付いていたのを突然思い出した。火事で出動する時、サイレンと鐘を「カンカンカン」と叩いていた。田舎の火の見櫓には半鐘が吊ってあり消防団のオッチャンが火急の際にはこれを乱打していたはずだ。

調べてみると、ちゃんと法律で決まっていた。
消防車には「警鐘」が付いています。この鐘は消防法第18条第2項及び「消防信号等に関する規則」の中で「どのような時に鳴らすか」も決められています。

それは「消防信号」といわれ
①火事が近くで発生したとき ②火災に消防車が出場するとき ③火事が消えたとき ④火事が起こりそうな天気のときなどに「警鐘」を鳴らすように決められています。

 消防艇の鐘は、形は同じでも目的が違ったいた。やっぱり普通の船舶の「時鐘」ではなく「警鐘」だったのだ。
 この消防艇は古いので警鐘が装備されいるが、今でも船火事の時この鐘を鳴らして出動するのだろうか。今、消防車の「警鐘」はもうみんな電子音になってしまった。

 消防艇は長期の航海をする艇種ではないので昔から「時鐘」の必要性もなかったし、入港時に磨く習慣もないのだ。ずっと港内に待機しているもんね。

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消防艇「くすのき」 神戸市消防局

要目
完  工:1982年
総トン数:133.7トン
全  長:26.2m
全  幅:6.5m
航海速力:16ノット
機関出力:910Hp×3

 面白いのはこの船には3基のエンジンが搭載されているのだ。火事で出動する時は3基の機関を全速にして現場に急行する。現場に着けば1基をポンプ専用にして消火にあたるとか。カタログでは全速16ノットとあるがもうその性能はでない・・・。でもご心配なく。神戸港にはちゃんと別に高速の消防艇はありますから。

 まぁ、この船のお世話には絶対なりたくないですね!
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by pac3jp | 2008-07-09 12:11 | 特殊船  

波浪推進船「サントリー マーメードⅡ」無事に帰港

c0041039_16475891.jpg 日曜日の朝、センターハウスの前にビデオカメラや大きなカメラを持った報道カメラマンがいそがしそうに行き交っている。花束を持った幼稚園児まで整列して待っている。勿論、ただの見物人も大勢いる。

 冒険ヨットマンである堀江さんが乗る「サントリー マーメードⅡ」がハワイ沖を3月中旬に出発してから3ヶ月少しかけて紀伊水道のゴールラインに到着したと、既に報道されていたが、今朝は母港で帰港のセレモニーがあるのだ。

 予定より少し遅れた9時40分頃、伴走艇2隻を従えてセンターハウス前の桟橋に到着。ボクも近くで写真を撮ろうと思って桟橋に入ったら、知り合いのメカニックが「あれ、部外者がいますね?」といったので周りを見ると皆さんPRESSのIDをぶら下げていたが、ボクも同業のような顔で小さなデジカメで写真を撮ってきた。

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 波動推進システムというエコと言うには効率が悪すぎる船の航海はどんな具合だったかは今後の堀江さんの講演会でお聞きするとして、航海途中は2~3ノットは出ているきいていたが、結局、ハワイからの7,800kmを110日かけて進んで平均速度は1.6ノットだった。

c0041039_16541187.jpg こんな低速な船はお天気に大きく影響される。肝心の波がなかったり、潮流が行く手を遮ったり、バックすることもあっただろう。
 
 口の悪いボクの友人などは「この位の速度ならゴミでもハワイから流れてくるで!」といっている。


 登山家の野口さんと神戸で対談する予定もあり、もう少しは早く帰れる予定だったはずなのに何故?と思っていたが、入港してくるボートの左舷の波浪推進装置のコイルスプリングがロープで仮止めされているのが見えた。
 この「サントリーマーメードⅡ」は両舷2枚の波動翼で推進力を発生するが左舷側のスプリングが切れているので能力が半分になり速度が落ちたのかも知れない。ボクの勝手な想像だけど・・・。

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 でも、今度の航海でも僅かな推進力しか持たないボートで、揺れに耐えて、じ~っと我慢していけるのは冒険ヨットマンと呼ばれる堀江さんだから出来る航海でしょうね。きっと。

【関連記事】:サントリーマーメードⅡ 出発!
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by pac3jp | 2008-07-07 17:01 | 特殊船  

海洋環境船「Dr.海洋」

 風の弱い瀬戸内をヨットで航海していて一番気を使うことはペラにゴミを巻きつけてしまわないようにすることだ。もし、ビニール袋1枚でも巻きつけば小馬力のエンジンではすぐに漂流だ。潮は早いし、本船やノリ網など障害物も多い。寒い海でも潜って除去するしかない。

 そんな海面のゴミを回収してくれているありがたい船が海面清掃兼油回収船などだ。播磨灘や大阪湾にゴミがまったくなくなったわけではないが少なくなってきたのは実感している。

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 この船は国土交通省近畿地方整備局神戸港湾事務所と長い名前のお役所が運用する最新の海洋環境船「Dr.海洋」(07.4進水)だ。
 通常は大阪湾及び播磨灘の一般区域でゴミや油などを回収する任務をしているが広域防災訓練などイベントなどでよく見かける。

主要目

船 種:海面清掃兼油回収船  最大速力:15.4ノット
船 型:双胴型        機関出力:1.324kW×2基
全 長:33.5m        推進器:4翼可変ピッチプロペラ×2
全 幅:11.6m        回収油タンク:20立方メートル×2
総トン数:196G/T      ゴミコンテナ:12.5立方メートル×4個

 ブリッジから見学すると流石、地元の船だと思わせるようにFURUNOの最新の航海・通信機器がずらっと並んでいる。機関室のエンジンなどを4分割の画像でモニターでききる。そうか、カタマランなので機関室は2ヵ所に別れているのでこれが正解か、など感心する。
 ゴミを回収するコンテナの近くにいたクルーに「この頃、どこが一番ゴミが多いの?」お聞きすると、大和川の河口だとおっしゃる。淀川も大きな川だがそれよりもっと多いらしい。大雨や台風の時期が酷いという。10年位前、ハーバー内に隙間なくゴミが溜まりえらい事になっていたが、その年は2,640立方メートルの浮遊ゴミを回収したとパンフレットに載っていた。

c0041039_11274750.jpg

 上の画像はゴミ回収コンテナ。カタマランの中央船底に吊り下げてゴミをすくいとる。右は水質調査装置。水質、底質等を調べるダビットだ。

 ゴミは潮目に集まってくる。当然そこにはサカナも集まり、それを狙って漁師もカモメなど鳥たちもやってくる。そこで、ちょっと潮目のお勉強をしてみる。

c0041039_11282158.jpg 左の画像は大阪湾で代表的な3つのタイプの潮目(フロント)を表示しています。

■1つは淀川や大和川の沖に出来る「河口フロント」と呼ばれる潮目です。1年中存在し、海水に比べて比重の軽い淡水は海水の上を広がり、その先端に潮目が出来るのです。
■2つ目は「潮汐フロント」と呼ばれる潮目です。海面が加熱され、そこに強い潮が流れて成層が破壊された海域と、潮流が弱い成層の海域との境目に発生します。この潮目は春から夏にかけて発生し、秋には消滅します。
■3つ目は「熱塩フロント」と呼ばれる潮目で、これは冬に、低温・低塩分の沿岸水域と高温・高塩分の沖合い水塊の境界に発生します。 

 
 その潮目を捜すのは長年のカンと気象情報だろうと思っていたら、本部で「浮遊ゴミ予測システム」でシュミレーションして分布予測をしているという。それに陸上に設置する24Mhzの海洋短波レーダーでの流況観測情報を追加して予測精度の向上を目指しているとか。
 ゴミの回収にもお金が掛かりますね!
 
でも、こんな役割も担っている。

 神戸大海事科学部では阪神大震災の教訓を生かし、海上ルートで人工透析患者を搬送するシステム作りを進めている。
 その支援システムでは、大阪湾沿岸で災害が発生した場合、同大学がGPSや衛星携帯電話を使って各自治体に連絡。治療可能な医療機関を探して登録された船舶で患者を搬送する。
 登録船は、同大学の練習船「深江丸」や、国の海洋環境船「ドクター海洋」、大阪市の広報船「夢咲(ゆめさき)」など。

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by pac3jp | 2008-07-04 11:38 | 特殊船  

6級海技士

5月初め、地元新聞夕刊にこんな記事(↓)が掲載された。


初の女性ペア、船長&機関長 神戸港の遊覧船

c0041039_911913.jpg 遊覧船に乗務する船長の瀬戸中智美さん(右)と機関長中沢望さん=神戸港(撮影・峰大二郎)

 神戸港の遊覧船「ファンタジー」(一五二トン)に、女性の船長と機関長のコンビが誕生した。女性が両方を担うのは珍しく、同港の遊覧船やクルーズ船では過去に例がないという。二人は「『神戸の遊覧船といえば女性の船長さんと機関長さんが乗る船』と観光客にいってもらえるよう頑張りたい」と張り切っている。(安福直剛) 

記事の全文はここをクリック。


 記事を読みながら、時代は変わり女性の職業として「船乗り」が選ばれる時代になってきたのだな、と強く感じた事だった。
 遊覧船でも20トン未満の小型船舶を使った船では女性の船長さんも前からいらっしゃった。だが、神戸港では小さい部類の遊覧船といえども総トン数が152トンともなるとボクから見るともう立派な本船だ。
 この船の運航には平水区域で200トン以下、出力750kw以下のエンジンを搭載した船舶の船長、機関長には6級海技士(航海、機関)以上の資格が必要なのだ。

 6級海技士は大型船舶の海技士になる最初の資格である。バブルの頃、土地投機で大もうけした不動産業者などが外国からデッキにヘリコプターを積んだ20トンをはるかに越える大型ボートなどを輸入して派手に乗り回していた。当時、不動産会社の社員などはこのボートの運航メンバーとして丙種航海士免許などを取に行かされた人もいたという。

 最近は内航船のブリッジ当直にも海技士資格が必要となり、資格を持たなかった船員さんに6級海技士の免許講習をする教習所が数多くある。所が、このところヨットハーバーでもこの資格が話題になる事があった。小型船舶操縦士からスキルアップして本船用の海技士を目指すヨットマン、ボートマンが出てきたのだ。
 その一人でボクの知り合いは、今は船舶関係の会社に勤めているが、既に通信教育コースを受講中だという。「テキストの内容も中々難しいよ」とおっしゃっていた。それにこれはプロの資格なので資格取得には乗船履歴がいるのだ。
 これがちょっと大変だが不可能なことは絶対ないはず。頑張ってください!!

 ハーバー近くの芦屋市に海技大学校がある。ここは3級~6級海技士までの内航船向け海技士の養成をしている学校で、そこの練習船「海技丸」は近くの深江岸壁にいつも泊っている。そうか、練習船は教室なので日曜日はお休みなのだ!

注【海技大学校は、船員(船員であった者及び船員になろうとする者を含む。)に対し船舶の運航に関する高度の学術及び技能を教授すること等により、船員の資質の向上を図り、もって海上輸送の安全の確保に資することを目的とする、船員の教育機関です】

c0041039_943795.jpg 練習船「海技丸」
  沿海区域・第4種船
  主要寸法
  全長:38.00メートル
   幅: 6.80メートル
  深さ: 3.30メートル
  喫水: 2.50メートル
総トン数:157トン
主機関 :800HP
 この船の船長は6級海技士(航海)、機関長は6級海技士(機関)と2名の船舶職員がいれば運航できるはずだ・・・。

 これから6級海技士資格を取ろうと思うと、正攻法では、まず船会社に就職して、海技大学校で座学1.5ヶ月+乗船実習2ヶ月を収め、会社の船に6ヶ月乗れば6級海技士の受験資格ができるので国家試験に合格すれば晴れて免許を獲得できる。

 ボクも小型船舶操縦士からスキルアップして、なにか世間の皆様のお役に立ちたいとは思っているが、その門戸はかなり狭そうだなぁ。
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by pac3jp | 2008-05-09 09:17 | 特殊船