2011年 06月 30日 ( 1 )

 

海水と真水で発電するエコな浸透膜発電(PRO)

 わが国は二酸化炭素を排出する化石燃料に大きくは依存せず電源の基本政策を原子力と定め、各地に原発を建設してきたが、福島原発のメルトダウンから電源を再生可能な自然エネルギーへの政策変換を求める声が次第に大きくなってきた。

 ところが、日本の全発電量に占める割合は大型の水力発電に風力・太陽光・太陽熱など自然エネルギー系の電源を全て足せば約9パーセントだというが、大規模な水力発電を除いた自然エネルギー発電は、まだ、たったの1%だ。この比率はドイツではもう約17%になっている。(ドイツは脱原発へ!)

 菅さんは2020年台の早い時点には再生可能エネルギー比率を20%にするとOECDでいっているが本当にできるのでしょうかね。でも、電力業界の盟主だった東電がコケタのでこれから「電力ルネッサンス」がおこるかも・・・。

 先日、日東電工が「ノルウェー「スタットクラフト社」と浸透膜発電の共同技術開発契約を締結」というニュースをみて「浸透膜発電」というテクノロジーがあると初めて知った。

 以前に日東電工の超純水製造用のメンブレンを使ったこともあったが、ボクの中ではどうしても発電とは結びつかない。ポンプで海水を押し込む逆浸透を利用した海水淡水化装置はヨットにも搭載できる小型の物も販売されている。これも同じようなカートリッジに入ったメンブレンだったが・・・。

 浸透膜発電とは、濃度差がある溶液(海水と淡水など)を半透膜で仕切った際に生じる浸透現象から得られるエネルギーを利用する新しいタイプの発電方式です。
 本共同技術開発では、海水と淡水の濃度の差を利用し、正浸透膜を通して得られた海水側の圧力でタービンを回転させ発電します。
 高効率の発電を行うためには、いかに正浸透膜の透水性を高めるかが重要となります。現在、脱塩用途に一般的に用いられる逆浸透膜では、透水性が低く浸透膜発電の効率を高める事ができないため、新たに浸透膜発電に必要な高い透水性を有する正浸透膜を開発することになりました。
 浸透膜発電を行うためには、濃度差の大きい水源の安定的な確保が必要となり、ノルウェーをはじめ、海水と河川が交わる河口付近や海に囲まれ大きな河川を有する日本など、世界で30ヶ所以上が候補地として期待されています。


浸透膜発電の特長
・有害物質やCO2を排出せず、環境負荷が少ない再生可能エネルギー
・天候、日照時間、昼夜を問わず安定供給することが可能
・設置面積が小さく、広大な土地を必要としない

 ↓浸透圧発電プラントイメージ 
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 海水と河川の淡水の濃度差を利用した発電なので周りを海に囲まれ降水量も多く清流の河川も多いわが国にはぴったりの発電システムのように思う。また予測出来ない風力や日中のみ運用の太陽光とは異なり、河川は常に流れており、いつでも発電可能だという点である。それに、この発電方法ではダムは必要なく、さらにインフラは堤防下に設置することができ、景観を損なったり、野生生物に悪影響を及ぼす可能性もない。用地の乏しい日本でもフットボールスタジアム程度の用地があれば2万5千KWクラスの発電所が設置できるという。
 排出物も有害物はなく発電後の常温の汽水がまた海に返されるだけだ。

 しかし、システムが細かい膜構造なので利用する原水の前処理が大変で、ゴミや濁りのないきれいな海水と淡水が必要なので大都市周辺の河川や内海では難しいでしょうね。ノルウェーでは世界各地の多くの河川とは違い、通常の河川には泥やシルト(沈泥)がないので前処理のコストが少ないので採算に乗りやすいのだろう。

c0041039_8173732.jpg 左画像はすでに2009 年11 月24 日、Statkraft 社はノルウェーのトフテに500 万ドルを投じ、世界初となる浸透膜発電所、PRO 実証プラントを開設している。同プラントはテニスコート程のビル内に2,000 ㎡の表面積を持つ浸透膜を格納、使用している。発電電力は4キロワットと微々たるもので、その5 分の1 の電力は同プラントへの揚水のため使用される。
 可能であれば、この揚水用のエネルギーを削減するため重力が利用されるかもしれない。約3キロワットの電力とは家電製品を2,3 台動かせる程度であるが、同社は2015年までに25メガワットを発電可能な大規模な工場の建設を計画している。

 フットボールスタジアムの規模となるこのプロジェクトは、500 万㎡の浸透膜から成る。同社はいずれPRO 発電がノルウェー全体の電力需要の10%を供給するだろうと構想している。

 ↓PROプラント全体イメージと各装置の画像(クリックすれば大きくなります)
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 ↓浸透膜のイメージは2個のBOXに描いてあるが実際は筒型のメンブレンが数多くの連なった構造になっている。

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 この発電方式ではこのメンブレンの性能と製造コストが事業化のキーを握っている。画像は実証プラントの膜面積が2000㎡のメンブレン群だが2.5万KW用の500万㎡となると単純計算では2500倍のメンブラン群が必要となるが一本あたりの透水率がもっと高い大型のものになるのでしょうね。

(注)PRO:(pressure-retarded osmosis)

【参考Web】:1.日東電工プレスリリース 
      :2.スタットクラフト社 
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by pac3jp | 2011-06-30 08:30 | ウオッチング