明石海峡に沈んだ貨物船から12億円もかけて油を抜く?

 3月の明石海峡船舶衝突事故のあともずっと油の漏出状態は観測されているがいくつかの調査地点でも、もう油は確認できなかったと発表されている。でも沈没船付近では時々油の波紋が海面に見受けられる状況があり、燃料タンクからの若干の漏油があるので、残っている油の抜き取り作業を「我々の税金」ですることによって2次被害、3次被害を防止できることにつながる。と兵庫県知事がおっしゃる。

 事故の技術検討委員会ではROLS(注1)というシステムを使って油の抜取りをすることが適切ではないかという方向で、しかし、現実に可能なのかを事前に確認をする必要があるので、ROV(注2)という遠隔操作ができる無人の潜水探査機を入れて沈没船を水中カメラ等で確認して次の段階に進めるように約3000万円をかけて事前調査をすることにしたと発表した。
(注1)ROLS:、船体に穴を開ける機器と残油を抜取るポンプが一体となった装置で、遠隔操作により船体に設置して、油の回収が可能なシステム。
(注2)ROV:遠隔操作ができる無人の潜水探査機で水中カメラを搭載している

 そして、この沈船から油を回収するシステム(ROLS)は世界でもノルウェーの会社の1社に1台しかなく、現在ROLSは台湾でベンゼンの抜取りにあたっていて、その後、韓国を経て10月に日本に来る予定だという。12月にはノリ養殖が始まるので工期は2ヶ月足らずだが潮の弱い時期だけの工事になるのでわずかの日数しか取れない。でも費用は12億円以上は掛かりそうだという。

どんな船だろうかと急に興味がわいて来た。

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 ←画像の作業母船はDP船(定点保持機能を有する作業船)でROV・ROLSをコントロールする。ROLSへ電力や熱源の供給、汲み上げた油の管理をする。


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 ↑画像はROVとROLSを使った油の抜き取り作業手順の模式図だ。沈船の燃料タンクに上下2ヶ所に穴をあける(実際は船体外板とタンクの間は空間がある)。上は燃料を抜く穴で下は抜けた後に海水が入るインレットだ。位置が決まるとROLSがマグネットで船体に張り付く。フランジを固定するボルトをタッピングし、パイプが通る大きな穴をあける。分厚い外板は火薬を使う場合もあるそうだが燃料タンクにはドリリングだろう。

 抜き取りパイプが繋がっても水温の低い海底で横たわる沈船のC重油はポンプを回しただけでは汲み取れない。母船から燃料タンクにスチームで加熱したホットオイルを送り込んで加熱しながらくみ出す。ROLSのポンプから母船に送る送油パイプもスチームのジャケットが仕込まれポンプアップを助ける。

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 ↑画像はROLSの外観

 この沈没船には燃料として主機用のC重油とジェネレーター用A重油の2種類のタンクがあるという。両方抜き取るのかどうかは知らないが潮流の激しい水深80mの海底に横たわる沈船からは模式図のように簡単にはゆかないでしょうが、12億円の仕事だしっかりやってくださいね。

 この油抜き取り費用は「外国船舶油等防除対策費補助金」というところから出る。国庫が2分の1負担する補助金だ。残りを関係自治体で分担する。兵庫県は残りの2分の1負担する。あと3市の負担割合は、現在神戸市、明石市、淡路市の3市と相談しているが、県としては、概ね1:1:1の方向で相談しているらしい。1市あたり1億円になるが神戸市、明石市はなんとかなるでしょうが、つい最近市になったばかりの淡路市は大変だろうと思っている。

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【参考資料】:明石海峡沈没船からの油抜取りに係る事前調査についての知事記者会見(2008年8月1日(金))
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by pac3jp | 2008-08-20 10:24 | 特殊船  

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