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「そうりゅう」のスターリング機関発電装置

「そうりゅう」のスターリング機関発電装置_c0041039_8265551.jpg 昨年12月に進水したAIP潜水艦「そうりゅう」に搭載されているスターリングシステムはどんな燃料をどう燃焼してどんなガスでピストンを動かすのだろうと思っていたが、つい最近川崎重工が発刊した「原動機100年史」の「スターリングエンジンの製造史」の項に「そうりゅう」のスターリング機関発電装置のライセンス国産へ向け研究開発してきた経過からボクが知りたかったレベルのシステム概要はわかった。

 左の図がスウェーデン海軍で実用化されたコッカムス社のスターリングエンジンの構造と主要目だ。
 艦内タンクに貯蔵された液体酸素を高圧酸素としケロシンを燃料ととして使用している。このスターリングエンジンは、下部がディーゼル機関に近い構造をしているが、上部の構造はガスタービンの燃焼器に近い構造をしている。
 製造にはスターリング機関特有の高圧作動ガス(ヘリウム)のシール技術、ガスタービンにも勝るとも劣らない耐熱耐食材料技術が要求される。
 また、機関本体のほかに周辺装置である液体酸素貯蔵供給装置、排気ガス放出装置などが必要。

 研究試作段階では冷却器及び加熱器などからのヘリウム漏れ、高温用熱電対の断線および燃料噴射ノズルでの著しい不均一燃料噴射などの不具合が発生したが、ライセンサへ情報を提供し部品交換や改良などで研究試作段階が終わる頃にはトラブルはなくなったようだ。

「そうりゅう」のスターリング機関発電装置_c0041039_829049.jpg 16SSに搭戴される前に練習艦「あさしお」の船体を切断してスターリング機関2群を組み込んだAIP区画を追加し実用試験を行った。液体酸素貯蔵供給、排ガス放出、発電システム制御、防音・防振の各技術の確認が行われた。この実用試験中、熱電対の断線、配管からヘリウム漏れ、弁類の固着など不具合もでたが迅速に部品交換、修理を行い支障なく実用試験は終了したという。

 「そうりゅう」のスターリング機関発電装置は練習艦「あさしお」搭載のMkⅡ型から加熱器、燃焼容器の改良や配管数の削減による部品寿命や整備性の改善が図られたMkⅢ型が搭戴されることになった。(上の画像)

 「そうりゅう」にはこの発電プラントが4群搭戴されている。合計240kwの電力が発生し、潜航中のバッテリー充電や艦内電源に当てられ、より長時間の潜航が可能になるのでしょうね。
 また、システム搭載による艦の大型化を抑えるため、発電機の小型化、機関及び発電制御装置の統合などのハード面の改良と酸素タンク圧力の過昇を抑えるための減圧運転機能などのソフト面の改良も実施された。
「そうりゅう」のスターリング機関発電装置_c0041039_8301128.jpg
 上の画像、少し見難いが、スターリング機関系統図を見ていたらこんな疑問がでてきた。
●酸素や燃料の配管にそれに燃焼室まで緑の窒素ガス管が接続されているのはエンジンの運転を止める時か或は非常停止でしょうか?。
●水色の冷却水系はエンジン容器やシリンダー冷却器、排気ガス冷却などは清水冷却なのでどこか別に海水との熱交換器があるのでしょうね。
●排気ガスは海水に溶かして放出するのでしょうが、泡がでてプクプクと音がでるとまずいのでどうするのでしょうね。  ど素人の疑問でした・・・。

 そして、下記参考図書によると川重は既に18SS(H18発注の潜水艦)用のスターリングエンジンの国産に着手したあった。

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【参考Web】:スターリングエンジンて何?

【参考図書】:原動機事業100年のあゆみ  川崎重工業㈱ 機械ビジネスセンター

by pac3jp | 2008-04-18 08:39 | ウオッチング  

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