アメリカ艇「WESTWARD」を見学する。(2)

c0041039_9485586.jpg 先週土曜日、ビジター桟橋の入り口で前日に「WESTWARD」を訪問したという知人から面白いエンジンを積んでいるので見に行こうと誘われ同行したが、また翌日、こんな船が大好きな友人達とクラシックなエンジンを再度見学するために訪問した。友人が素晴らしいエンジンだと褒めたせいか、今度はエンジニア自らあれこれと説明してくれる。

 シリンダーの下部には「ATLAS IMPERIAL OAKLAND CAL.USA 」と表示がある。1924年の建造時から搭戴さている主機関だがサビが出ているような所は全くなく完全に整備されているのだろう。ちなみに、もうこのエンジンメーカーは存在しないそうだ。

船の歴史年表によると(ディーゼルエンジン関係)

1893年 ドイツ人ディーゼルが無点火式内燃機関を発明。ディーゼル機関と称せられる。
1897年 ディーゼルはMAN工場で単筒、タテ型機関を造る。最初の信頼しうる機関。
1904年 ロシア船(1150トン400HP)最初の舶用ディーゼル機関の始め。
1911年 英国貨物船トイラー号がディーゼル船として始めて大西洋を渡る。
1921年 英国ドラマ号(8441トン)は最初の航洋ディーゼル客船。
1924年 米国「WESTWARD」進水。大阪商船客船音頭丸(688トン)日本で最初のディーゼル船。
ニュージーランドの客船(18500トン)太平洋で始めての大型ディーゼル客船。
1927年 世界で建造中のディーゼル船のトン数、初めて汽船のトン数を越える。


 このように「ウエストワード」が建造された時代は第一次世界大戦も終わり、戦時に開発された技術が民間に転移され新型船においても蒸気機関から内燃機関のディーゼルに舶用エンジンが変わり始めた時代でもあったのだ。
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 機関室中央に大きなディーゼルエンジン本体が据わっている。このエンジンはボア9インチ×ストロークは12インチ位か、靴のサイズだという。回転数は280回転/分、4気筒150HPのディーゼルエンジンだ。床からの高さは約1.7m、長さは2mくらいある。少し小ぶりだが、いつか映画でみたUボートのエンジンのような雰囲気がある。クランクケースから弁を駆動する多数のコンロッドが立ち並びシリンダーヘッドにはロッカーアームと手動のハンドルが各シリンダー毎についている。

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 始動は圧縮空気を使う。機関室に大きな空気タンクが3本ある。コンプレッサーが見あたらないので空いたシリンダーで空気を圧縮する仕組みかも知れない。エンジンの前には重さは1.5トンもある赤いフライホイールが付いてそれで油圧ポンプが駆動されている。

c0041039_9512593.jpg エンジンの下部にカムとクランクで駆動される赤く塗られた燃料噴射ポンプがある。
 エンジンの冷却システムは我々エンジンのようにジャケットに清水を通す方法でなくて潤滑油を海水冷却する方法らしい。エンジンの下に熱交換装置があるとのこと。

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 エンジンの出力側をみると見るからに巨大な機械式の逆転機がついている。操作はブリッジの舵輪の右にあるハンドル回し操作する。直径2インチはありそうな太いシャフトが幾つかのベベルギヤやユニバーサルジョイントでブリッジから逆転機にリンクしている。そして、その動きが大きなドラムのブレーキをかけることによって内部の遊星ギヤーが逆転に切り替わる仕組みだという。最近のコンパクトな逆転機から見ればなんとも原始的なシステムに見える。

 このエンジンのスロットルレバーはブリッジの逆転機用ハンドルの下についている真鍮のレバーがそうである。現在のボートについているクロームメッキで輝いているモノとは大違いだね。

 このサイズのボートが一般的にどの位のエンジンを搭載しているのかよく知らないが、ロングレンジクルーザーは巡航速力が10ノットや12ノットの設定なのでプレーニングタイプのボートに比べ概して低出力のエンジンだ。この船は150HPのエンジンで2000ガロン(7.4トン)のディーゼル燃料を搭載できるのでかなりの距離を航海できそうだが木造の古い船体は激しい波浪の中を長く航海するのは辛いだろう。きっと好天が続くシーズンまでゆっくりと過ごし、凪の海をゆったりと渡ってきたのでしょうね。

 ボクはヨット用で小型のディーゼルエンジンしか知らないので説明も誤解している部分もあるかと思います。よく分らないところはハーバーで直接機関長にお聞き下さい。気さくにおしえてくれますよ。
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by pac3jp | 2008-04-09 10:18 | ボート  

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