省エネ帆装船の今昔(3)

 1980年代の石油危機には省エネ帆装船が開発され、大小船舶が実用に供せられたが、程なく石油価格の安定や、意外にセールなどの維持にコストが掛かりその後に続く帆装貨物船は日本では造られなかった。
 いま、原油は1バレル100ドルを越え、燃料高は車は勿論、船舶においても大変な時期にきているようだ。そんな時、NHKアーカイブで1983年に建造された帆走貨物船を冬の日本海でテストした「帆装タンカー荒海をゆく」と題する番組が再放送された。そして、その番組の冒頭に2007年12月15日ドイツで進水した最新の「貨物帆船」の映像が流れた。

世界初の貨物帆船がハンブルク港で進水式
報道メディア:北ドイツ放送(ndr)
発表日:2007年12月15日
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写真:北ドイツ放送(ndr)

 蒸気機関の発明以後には貨物船も含めて帆船は姿を消していたが、地球温暖化対策が叫ばれ、原油価格がバレルあたり100ドルに近づく昨今、ドイツでは《世界初の貨物帆船》が、連邦大統領夫人の臨席の下で12月15日に進水式を祝った。この船は1月にベネズエラに向けて処女航海に出る。
 全長 132 m のこの船の特長は、主機関のディーゼル・エンジンをコンピュータ制御のパラグライダ式の帆が助ける点にある。帆の面積が160 m2 ならば 20%、320 m2 ならば 30% の燃料が節約できる計算とのこと。600 m2 の帆も準備中。

 
 パラセールを推進力に採用したのはさすがドイツ人だが、「世界初の貨物帆船」と言っているのはちょっとおかしい。日本ではパラセールタイプは無かったがマストに展開するセールを持つ貨物船は20年前には存在した。凧のように揚げるパラセールは大洋の貿易風帯をずっと追手で走る航海ならもってこいだが、風が横に振れたり前に回れば効果はない。大圏コースを航海する本船では片道しか帆走できないかもしれない。また、風向の変化が多い日本沿岸を航海する内航船ではまず無理だろう。

 実はドイツで82年前の1926年、風力を利用する貨物船「バルバラ」が造られている。セイルではなく3本のローターを風力で回転させ推進力を得るという発想で造られたそうだ。その原理は野球の変化球と同じ理論によっている。
 大雑把にいうと、投手が投げたボールが回転していると、その回転でボールの表面の片側に空気の圧力の高い部分が出来、その反対側が低くなる。その圧力差でボールの進む方向が変わり、変化球となる。その原理を使い、ボールの代わりに風の中で大きな円筒を回して円筒の外側に圧力差を起こし、それが起す力で船を推し進めるというものだった。
 地中海への初航海では主機関で約10%の節約が出来た。でも、追手の航海では変な癖が出てうまく走らなかったらしい。

 1980年代には省エネのテーマは燃費や人件費の低減が主だったが、現在は地球温暖化対策が大きなテーマとして叫ばれている。
 日本の船舶でも政府が主導して「エコシップ」(エネルギー消費効率の優れた船舶)など進めているが、船舶の主推進力を自然のエネルギーから調達するという正面から向き合う省エネの大物アイデアはなくソーラーパネルや風車で貨物室の照明を賄うなど小物?省エネ対策や固定バラストを装備し、バラスト水の量を減らし海域の環境保全に当るなどがあるが・・・。

 開発リスクの大きい帆走型より、抵抗の少ない船型やガスタービン対応型新船型 、電気推進式二重反転プロペラ型ポッド推進器を用い電気制御による人員の削減や操船の簡易化など補助金の付きそうな「エコシップ」の方向に進もうとしているのだろうか。

【関連記事】1:省エネ帆装船の今昔(2)
【関連記事】2:省エネ帆装船の今昔(1)

参考図書:酔狂な船たち 三宅啓一著
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by pac3jp | 2008-03-21 12:09 | 帆船  

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