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シーアンカーとドローグ

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 荒天時のシーアンカーとドローグの使い方を混同している人が時々いる。一般的にはシーアンカーとはバウから展開するパラシュート状の海錨で船首を風に対して立てるために使う道具だ。イカ漁船や釣り船などが沖合いで漁労するときに使っているし、釣り好きなモーターボートもよく使っている。普通の天気から荒天まで使うがサイズは調整が必要だ。販売されている商品の種類も多い。深いキールとマストを持つヨットは横に向いてしまってうまく風に立たない。でもキールのないカタマランはよく風に立と聞いている。

シーアンカーとドローグ_c0041039_10384328.jpg 一方、ドローグは荒天航行時に船尾から展開して風に押されてスピードが出すぎるのを抑えるために使う道具で外洋を航海するヨットなどに装備されている。パラアンカーよりは大分小さい。昔は船尾から長いロープを流し、古タイヤやアンカーチェーンをつけて減速し嵐をかわしたと航海記にはよく書いてあったが、今はドローグとして各種の製品が売られている。
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 左の画像は友人の34f艇に用意してあったドローグだ。WEST MARINEで to 35f 214.99ドル。














 日本セーリング連盟の文書に詳しい解説がありましたので以下をご覧下さい。


ヨットにおけるドローグの使用について(JSAF-SR 2005-2006より抜粋)

荒天の荒波に対するヨットの転覆防止にドローグがどのくらい役に立つかについてサザンプトン大学のWolfson研究グループはRORCへ報告書を出している。
船尾から流したドローグはヨットの船尾を引っ張り、艇体のスピードを落とし、船尾を前に引っ張られるようにする働きをする。
Wolfsonモデルのテストにおいてはこの姿勢はヨットが凌波することによって横方向への回転とロールオーバーを防ぐ事を証明している。ドローグかシーアンカーはSR4.27で推奨されている。
スターンからのドローグの展開は船尾からの波の打ち込みを避けられないため全ての開口は確実に閉められるようになっていなければならない。
この点に関し、SRでは例えばヨットは「ヨットは頑強で、水密構造に出来ていること、特にキャビン本体は打ち込む水の圧力とノックダウンの圧力に打ち勝てるよう建造されていなければならない」と要求している。
コンパニオンウエイを閉鎖するハッチボードとウオッシュボードは恒久的な何かの方法でー例えばラニヤード、などで固定されていなければならない。もしこのような基本的に重要な部材が流失もしくは破壊された場合には船尾から打ち込む海水で艇は見る間に水船になってしまうであろう。
コックピットロッカーのハッチも特別な注意が必要である。時によるとそれらは大きすぎ、ロッカーはハルの内部に直接つながっている。

これらはヨット全体の水密構造にとって重要であり、強固に閉じられるようになっている事が大切である。多く使われている簡易型のラッチは充分とは言えず、海においては南京錠型の物が良い。ハッチのヒンジやラッチの留め金具は螺子(ネジ)式ではなく、貫通型のボルトを使用すべきである。ロッカーの蓋やハッチにとって完璧なシール(水密)が大切である。
UKの運輸省は船舶に使われるライフラフト及びライフボート用のドローグの規格を決めている、それはヨットにも適用できるものでありセールメーカーでも製造できるものである。ドローグの口の径はヨットのLWLの10%から15%範囲内であるべきである。他の部分の寸法はこれの比例により計算されたい。

ドローグのラインについて
目安としてLOAの10倍の長さを使うと良い、そして波の周期で調整出来ると良い。材料としては三つ編みナイロンーアンカーロープが良い。
ドローグのエンドに使う重りについてドローグは充分水中に沈んでいる事が重要である、理想的には水面下10メーターぐらい沈める、重さとして20Kg位が良い。重りとして、ロープとドローグの間に10mチェーンをいれることも一つの方法である。

ドローグの展開について
艇を転覆させないためにはドローグが常に十分な張力で艇を引っ張り、艇が横方向に進路をそらさないようにする事である。その為にドローグが船尾から来る2番目から3番目の波の中にあるように調整すると良い。2本のドローグを並べて使うのも、片方のドローグが波浪中に転がったときにラインが緩む危険を回避する良い方法である。

艇への固定
シートウインチなどの強力な個所に固定する

ロープの面倒を見る
定期的にロープの位置をずらす事も、擦り切れを防止する為に大切である。擦り切れ防止用にナイロンスリーブをフェアーリーダーに通す事等も考える。

他のドローグ装備について
Jordanと呼ばれる連続型のドローグは長いロープにダクロン材料で出来た小型の円錐コーンを複数定間隔にロープに縫い付けられていて、コーンの先端は常に後方を向くようになっている。優れている点は、もし一つが波頭によって緩んだとしても、残りのコーンが艇を引っ張る構造になっていることである。

パラシュートもしくはパラアンカーはパラシュートの形状をしているシーアンカーである。展開の仕方はドローグと似ているものの、形状はもっと大きく、船首から展開するように設計されている。直径18フィート位が35-50フィートのヨットに対して適当と言われている。パラーアンカーはドローグの様にチェーンを付けて使用するのが良い。パラーアンカーは特に一部のマルチハルの権威たちに推奨されている。

 昨日、ロングクルージング指向のシングルハンダーたちと話をしていると、天候不順だった去年の4月、西宮~小笠原を航海したお二人は日時は違うが共にベアポールでの荒天航行を2~3日もし、かなりの速度で風下に流されたそうだが、幸い広い海域なので特に減速などはしなかったとお聞きした。確かにシングルハンドで荒天時に長いロープをつかってドローグを展開するなんて大ごとだろう。でも逃げ込む港がない外洋を航海するフネはそんな覚悟は最初からちゃんと出来ているんでしょうね。

注:イラストは「サクセスフルクルージング」VOL.2 舵社

by pac3jp | 2007-04-02 11:14 | シーマンシップ  

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