木のマスト

 昔から高いマストは帆船のシンボルである。弁財船は一本マストで南蛮船は3本マストだった。当然、材質は木だった。長い間帆船は木製マストが使われてきたが良材の不足と工業の発展によって新しいマスト素材が現れ、鉄から鋼鉄へと変っていった。やがて帆船の時代は終わったが、マストはヨットのシンボルとして生き続けてきた。だが、木製マストにこだわったヨットは接着剤の助けを借りて、複数の木材を積層し要求される強度を確保したマストを造った。でも近年、殆どのヨットが高い工作技術が必要な木製マストより大量生産可能なアルミ素材に変ってしまった。

c0041039_1305436.jpg ヨット乗りの間でも有名な野本先生の「春一番」は初代も2世も木製マストだった。マストの起倒方法やニス塗りの記事をよく読んだ記憶がある。でも、木製マストは本当に減ってしまった。このハーバーでもボクが知っているのは3隻だけだ。1隻目はハーバーウォークからでも良く見える佐野造船24fの「佳世」さんである。このマストはいつもきれいにニスが塗られていていて手入れも良い。
ハーバーを写生に訪れる人たちに一番人気があるヨットでもある。




c0041039_1312598.jpg 2隻目は陸置の木造セミロングキール、ガフリグのスループでニスを塗った短めのマストが立っている。このヨットは船齢は高いが、昨年、ここのレースで勝ったとか聞いた。仲間のYAMAHA28Sはしっかりと負けたそうだ。
ヨットは古くても手入れが良ければ、セールとクルーの腕で結構それなりに走るもんですね。


 もう1隻はご近所の「YamatoⅡ」(画像は↓)30年以上前だろうか、フジヨットの前身の造船所がアメリカ向けの輸出用ヨットとして造られ、アメリカで長らく乗られてきたケッチである。最近になって今のオーナーがアメリカからそのスタイルに惚れ込んで買って来た。日本に今でもあるフジ32と同じようなデザインだ。このケッチにも2本の木製マストが立っている。残念ながらこのマストはニスの上から白い色にペイントされている。チョット見ただけでは白っぽいアルミマストに見えるがマストトップやスプレッダーのマスト金具が木製マスト用の金具である事からわかる。

c0041039_137219.jpg 古いヨットの木製マストをどうメンテしてゆくかだが、ニスは紫外線に弱い、数年に一度は古いニスを全部剥がして新しいニスを塗らなければならない。これがまた手間暇が掛かるのだ。また、木のマストは重量を軽くする為に芯の部分は空洞になっている。でもその空洞の部分に結露が生じ、内部から腐ってしまうこともあるらい。その点検も怠れない。
 裸になったマストを点検し、マスト・ブームにしっかりとニスを塗った後、ペイントで上塗りする。あのアメ色に光るニスの輝きはないがマスト塗装は確実に長持する。古い木造ヨットを持っていると手入れの要るのはマストだけではないのだ。
 「デッキもハッチもエンジンもと際限なくやる事は出てくるんだよ」と古てのヨット屋さんが言っていたなぁ。

 ヨット・ボートの専門誌の老舗「舵」誌は昭和7年6月創刊だ。当時(1932年)にもヨットやボートがあり人々はそれを楽しみ、そして雑誌を買う人たちも居たわけだ。当時のフネが今残っているかどうかボクは知らない。だが42年前(1964年)奥村ボートで造られ、日本一周航海をした神田夫妻の木造ヨール「アストロ号」を近くで見かけた時、ああ、きっと誰かがレストアして大切に乗っているのだろうと思った。
 アメリカでは古いヨットも比較的多く、マリーナではそんな古いヨットがチャンと整備されて使われているのをよく見るよ、と外国のマリーナ事情に詳しい友人が言っていた。

 優美なスタイルを持つクラシックヨットは素晴らしいが、その面倒を見てあげるのにオーナーの皆さんは人知れず大変な努力をしているんでしょうね。
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by pac3jp | 2006-10-04 13:28 | ウオッチング  

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