クロノメーター

c0041039_8341676.jpg 長年チャートテーブルの壁に掛かっていた真鍮製のヨット用防水タイプの時計を電波時計に取り替えた。理由は時計の精度が悪い事とその場所に温度計を付けたかったからだ。丁度、近所のホームセンターで温度計とカレンダー機能も付いた電波時計が安くで売っていた。当分キャビンに海水が打ち込むような海に出る予定はないので時計が防水でなくても良く、また、スペアーの時計も手元にあるので思い切って交換した。秒針がないので天測用には使えないが、もうGPSの時代になってしまったのだ。モールス信号が趣味の世界で生き残っているようにやがて天測もそうなるのだろう。
 
 でも外洋を航海するヨットの航海計器としての時計は電波航法が普及するまでは重要な位置にあった。天文航法に使われる航海用の時計はクロノメーターと呼ばれ最高級の正確さを誇り、注意深く維持管理されてきたのだった。

c0041039_8344851.gif 昔から人々は大洋に乗り出していったが、その航海は北極星高度や太陽の正中高度を測定して緯度を求め、推測航法と合わせて航海していたのだろう。経度を求めるには正確な時間の測定が必要だった。だが、当時は教会の塔に付いているような時計はあったが激しい振動や気候の変化を伴う船舶用の正確な時計はなかった。

 経度が不確実な為に起こる頻繁な海難に対処する為に1714年、イギリスはアン女王の時代に「経度法」を制定して海上で経度を確定する「実用的かつ有効」な手段を見つけた者には、国王の身代金に相当する賞金、一等賞は2万ポンド(現在の価値では10億円以上といわれる)を与えることにした。


 イギリスにジョン・ハリソンという腕の良い時計職人がいた。彼は正確に時を告げる機械作りに初めて科学的な立場から取り組み、経度測定というテーマに生涯の情熱を捧げた先駆者だ。ニュートンが不可能と思っていたことを、ハリソンはやり遂げた。燃え尽きることのない炎のように、世界のどこでも母港の時刻を正確に刻みつづける時計を発明したのである。

 ハリソンは正式な教育をうけておらず、時計職人に弟子入りして修業した経験もないのに、摩擦の殆どない、したがって注油も掃除も必要ない時計を作り上げた。錆びない素材を使ったその時計は、ほうり投げようとも転がそうとびくともせず、部品どうしのバランスが崩れることもなかった。振り子は使わず、内部の仕掛けには種類の違う金属を組み合わせていたので、気温が変化して一つの部品が膨張・収縮しても、別の部品がそれを補って、全体としては一定の動きを続けることができた。

 だが、経度測定は天文学者の分野だったこともあり時計職人よりも天文学者を優遇するために規則がたびたび変更された。けれども最終的に勝利したのは実用的でしかも正確なハリソンの時計だった。1768年から始まるキャプテン・クックの航海が成功したのはハリソンの時計を持って行ったからだといわれている。しかし、彼が賞金を手にしたのは1773年だった。実に40年以上の歳月がかかったのだった。 「経度への挑戦」デーヴァ・ソベル著 から引用


 経度法の莫大な賞金にイギリス中の学者や時計屋さんは興奮した。そして多くの様々な提案が出されたが、長い間「経度を発見する」というのは不可能な試みと同意語になっていた。その間、競争によって天文学も精密機械の分野も格段に進歩してきた。クロノメーターという言葉もこの時代にジェレミー・サッカーが自分の時計にそう名付けて提案したものが現在、海上用の時計として一般名詞になっている。製作者のジョン・ハリソンが付けた名ではないのだ。

 下はジョン・ハリソンが苦労して造ってきた1号機から4号機の画像だ。現在でも本物がグリニッチ天文台に展示されているそうです。
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 カーナビから航海用まで広範囲に使われているGPSも、ボクの電波時計も電波を使って情報を伝達している。電波は本当に大丈夫だろうか? 大分前、太陽の黒点の大爆発で通信状況が混乱した事もあったし・・・。
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by pac3jp | 2006-08-11 08:47 | ヨットの艤装と艤装品  

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