海水冷却水がエンジンに浸水

 ある日、久しぶりにヨットに来て、さぁセーリングに出ようとバッテリーの電源ONにし、エンジンスタートボタンを押す。エンジンからはセルモーターが「カチッ、カチッ」と作動している音はするがエンジンは回らない。バッテリーが弱いのかなぁと思い、バッテリーSWをBOTHにしても同じだ。数回試してみるが状況は変わらない。あぁ、これはセルモーターの故障だな。と、自己診断ではそう結論に達したが・・・。

 こんな風に海水冷却水回路のアンチサイフォンバルブの故障(不調)が引き起こすエンジン内に海水が浸水し、シリンダー内でピストンがロックした現象が発見される。

 一見、係留中にエンジンの中に海水が入る事は考えられない。船底のシーコックから入った冷却水はエンジンブロックを冷却し、排気ガスと共に艇外に排出される。燃料に海水が混ざればそうなるが、エンジンが不調になったり、止まってしまう。確かにエンジンが動いているときはエンジン内に水が入る事はない。

 だが、我艇の場合、船底のバルブから入った海水は海水フィルター → ギヤーBOX冷却 → 海水ポンプ → アンチサイフォンバルブ → 熱交換器 → ミキシングエルボ → ウオーターロック → エクゾーストホース → 艇外排出 と、海水冷却水回路が構成されている。
 エンジンが止まると喫水線よりも高くに取り付けられたアンチサイフォンバルブでこの回路に空気が入り、サイフォン回路は出来ないが、アンチサイフォンバルブが何かの原因で作動しなかったら、シーコックから排気のウオーターロックまでがサイホン回路を構成し、ウオーターロックからミキシングエルボまで入った海水は排気マニホールドからエンジンの排気弁の隙間からシリンダーへ流れ込む。そしてクランクケースまで入ってくることもある。

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 アンチサイフォンバルブはヨットビルダーによって海水冷却水回路の中で取付ける場所はまちまちだが、要するに喫水線より上で空気が入るようになったら良いのだ。でも、海水冷却水回路の途中に海水ポンプがあり、サイフォン回路が出来ないのではないかとも思うが、僅かではあるが流れるらしい。

 このトラブルの代償は大きい。すぐに発見して対処出来れば良いが、フネに不在の時間に僅かずつ浸水するので往々にして発見は遅れる。結果、最悪はエンジンを下ろしてオーバーホール修理になってしまうのだ。

c0041039_8165629.jpg アンチサイフォンバルブは多くのクルージングヨットに付いているが、どんな目的のためについているのか知らないオーナーもいるようだ。ボクの友人のヨットもエンジンルームの後にちゃんと付いていたが、簡単に説明したくらいでは良く理解できたようには感じなかった・・・。
(注)アンチサイフォンバルブはボルボペンタパーツリストではバキュームバルブと表示されている。画像はボルボではなくてビータス製の物である。


 重要なパーツなのでエンジンマニュアルには多分書いてある。新艇で保障期間内のエンジンならともかく、船体保険もエンジンは担保されないと聞いている。たまにはエンジンルームを覗いて確認しておこう。

 ちなみに、エンジンの掛かりが悪いためセルモーターを長く回し続けてもエンジン内に浸水することがあるそうだ。そんな時はシーコックを閉めてからやってみるといい。と、この道の先達から聞いている。
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by pac3jp | 2006-07-12 08:25 | シーマンシップ  

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