エマージェンシーティラー(緊急用ティラー)を試す

 船の進む方向を定めるのは舵であるが、その舵を動かす道具がティラー(梶棒)である。小型の船はこのシンプルな構造で故障の少ないティラーを使って操船しているが、デッキのデザインやコックピットの配置によってはティラーを付けられないこともある。そこで、そういう船は舵軸から離れた場所に舵輪(ステアリング・ホィール=ラットとも言う)を設置して操船するシステムを採用する。

 クルージングヨットでは全長で34f位がティラーとラットの境目だろうか、レーサーはもう少し上で38fくらいか。だが、最近は30f前後のヨットにもラットがついているのを見かける。まぁ、趣味の世界ですから何でもありですが・・・。

 舵軸を遠隔操作するには各種の方法があるが、大きく分けてヨットの場合は1.ワイヤー方式 2.コンジット方式 3.ギヤー式 4.油圧式の4方式がある。中小型のヨットで多いのはワイヤー式である。

 仕組みはコックピットのラットを回すと、そのシャフトに直結したスプロケットのチェーンが舵駆動用のワイヤーに繋がっていて、ペデスタル直下のシーブで直角に曲がり、ワイヤーは舵軸につけたクォードラントに至り、舵は動く。

 直接、ティラーで舵を動かす方式に較べて、ラットで操舵するシステムは部品の数も多い。従って、故障の確率も高くなる。また、メンテナンスの必要な可動部がデッキ下にあるため点検不足で故障の可能性はより高くなる。

 そこで、ラットで操船するヨットには必ず、緊急用のティラーが付いている。・・・筈である。
 持ってないヨットはないはずだが、もしかして、紛失している事もある。新艇の場合はついているのでもう一度探してみよう。

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 そして一度海が穏かなときに緊急用ティラーを試してみよう。ヨットもアフターコックピットタイプはコクピットの見えるところにラダーヘッドが出ているか、デッキ面でキャップを被せてあるが、センターコクピットのヨットははキャビン内に緊急用ティラーのラダーヘッドがある。ヨットビルダー標準型のティラーでは操船が難しい場合もある。

 最近、ご近所のラット装備のヨット4隻に聞いてみると、1隻は装着の経験ありと返事があったが、残りの3隻のオーナーは持ってはいるが、装着したことはないとおっしゃっていた。その内の1艇にお邪魔して装着してみると、ラダーストックのサイズよりティラーのソケットサイズが大きくてガタガタ、固定するボルトもついていなかった。これでは波があり、揺れるコックピットで短いティラーでの操船は難しいかもしれない。

 もう1艇のヨットはサイズもぴったりでラダーストックにもティラーを固定するボルトもついていた。ハーバー内で実際に操船してみたが、大きく舵を切るとティラーが短いせいか、かなりの力が要る。ラットで舵を切るのと大違いだよ。
 もう一つ大きく変わるのはティラーでの操船だ。右に押すとフネは左へ、左に引くと右にまわることである。

 テストをお願いしたこのヨットのオーナーさんはエマージェンシーティラーで桟橋に横付けしようとして、大騒ぎをしていた。左舷付けしようと思って船首を右に振るべくティラーを右に押したからだ。ヨットは船首が桟橋に直角に向きはじめ、衝突しそうになっていた!!

 ティラーのヨットに乗ったことのないオーナーは一度、ティラーのヨットかディンギーででも練習しておいたほうが賢明かも。
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by pac3jp | 2006-01-13 09:31 | シーマンシップ  

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