初めてのヨット

 初めてヨットを購入するのは「とっても楽しい」ことだが、自分はこのように遊びたいと思っているのに相手に良く伝わらずにセールスマンの言いなりで買ってしまったのかな? と思わせるオーナーの方がいらした。

 ある日、向かいのポンツーンに、かってIORワントンとか言われていた元レーサーが回航されてきた。 艇種は「YOKOYAMA39」。外観は細くて高いマスト、複雑なリギンからランナーがぶら下がり、太いブームにでかいセールが束ねてあった。ハルはきれいにペイントされたいるが、浅く広いコクピットに大きなウインチが並んでいる。

 このハーバーでヨットレースをするにはチョットばかり古臭いなと思っていたが、数日すると新しくオーナーになった人が現れた。お話をお聞きすると、ヨットは初めての方だった。家族や会社の人と乗りたいのだそうだ。なんというミスマッチ!と思ったが、気の毒だったので少しだけ操船のアドバイスをした。

 セールスマンは多分こういったのだろう。大型のヨットなので定員は20人は取れます。大きなセールを展開出来て帆走性能も良くスピードも速い。キャビンも快適ではないが充分に広い。予備のセールも沢山あります。こんなフネなのに特別の価格設定しています。ご希望があれば船体にお好みのペイントもいたします。

 このオーナーがどんな希望を言ったのか知らないが、多分このヨットが初心者に向かないとは、説明しなかったのだろう。初心者にも優しいヨットはレーサーに比べてスピードとスマートさは少し劣るが、ヨット遊びに必要なその他の要素は同等以上に備えている。

 オーナーも最初のうちは会社の若い人達を引き連れて手こずりながらも乗っていたが、やがて、近隣の泊地に所属するデスマストして乗るヨットがないレーシングチームがこのフネを借りて10人位が乗り組んでクルーのトレーニングに使っていた。

 ヨットの維持は手が掛かる。雨が降ればマストを伝ってビルジが溜まる。たまにはエンジンを始動してバッテリーに充電することも必要だ。1年に1・2度は上架して船底塗装を、台風が近づくと増し舫いをしなければならない。
 ヨットは車と違ってメンテナスフリーではない。忙しいオーナーに代わって近所に住む車好きの若い人が時々はヨットに来て細かい作業をやっていた。

 オーナーに見限られたヨットは桟橋に繋がれたまま、ランナーのロープは切れ、フェンダーカバーがボロボロになり、ついにはロッドのアッパーシュラウドも切れてマストが曲がってしまい、トーレールにスピンハリでテンションをかけ応急処理がしてあった。ヨットに関わっているだけでも楽しいボクから見れば、何とも痛ましい姿のヨットになってしまった。

 やがてこのヨットはロッドの代わりにワイヤーのシュラウドを付けて韓国に売られていったらしい。向こうで大事に乗られる事を祈っている。
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 初めてヨットを買う人も、フネを乗り換えるヨットマンもこの世界の経験が豊かであろうヨット業者にアドバイスを求め、頼りにするだろう。自分の商品に自信を持って薦めるのは良いが、その経験に照らして、初心者ユーザーもそのヨットで長くヨットライフが楽しめそうなフネを薦めて欲しいね。
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by pac3jp | 2005-10-21 08:45 | ウオッチング  

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