デッキ上の安全装備(ライフライン)

 アメリカズカップのレース艇で多くのクルーが相手艇と激しくマッチレースを戦うとき、クルーはゆれるボートの上で高度で華麗ななテクニックを駆使しヨットをコントロールしている。見ているとまったく無駄がない動きに見える。そして、ヨットのシァーラインもすっきりと見える。我々が乗るヨットには必ず装備されている、ライフラインが無い。
 いつも管理された海面で、サポートボートに守られて乗っているのでデッキワークの邪魔になる装備はルールで不要なんだろう。

 一方誰の援助も無く1隻で航海するクルージングヨットのデッキ上で作業するとき、落水の恐怖から心理的に守ってくれているのは、頑丈なスタンションに支えられたライフラインだろう。

 ORCのレギュレーションでは上下2本のライフラインの高さとステンレスワイヤーのサイズ、スタンションの間隔はミニマムは定められている。

(LOA28f以上のヨットはライフラインの高さは60cm、下は23cm以上。ワイヤーは4mm、スタンション間隔は2.1mだ。43fを越すヨットはライフラインワイヤーが5mmになる)

 当然、日本小型船舶検査機構にも船検の為に同様の規則があるのだろうが、ボクに資料の手持ちがないので分からない。

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 28f~40fのヨットで調べてみると、ライフラインの高さはデッキから大体、60cmから69cmだった。ヨット上ではこの凡そ10cmの差が大きい。たかが10センチだが、デッキのデザインの違いにもよるが安心感は格段に増す。
 ビルなどの手すりに較べると随分低い。転落防止の為なら人間の重心位置より高くなくてはならないのにそうはなっていない。
手すりではないのだ!!

 帆走中のヨットのデッキを移動するときの手掛かりはデッキに固定されているハンドレールやシュラウドを握ったほうがより安全だろう。

 ライフラインを支えるスタンションはデッキのトウレールと組み合わされて取り付けられたスタンションソケットに差し込んで留められてタイプが多い。ソケットはデッキを貫通している2本から4本のボルトで取り付けてある。

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 良く見るとデッキ上から海に向かって外力が掛かるとトウレールとデッキからのボルトで支えられるが、反対に外から強い力で押されたらトウレールに掛かっているフックが外れソケットベースも外れそうになる。デッキで転倒して横に転がったらライフラインとスタンションで落水は防げるかもしれないが、クルーが桟橋からヨットを押し出すときや、着岸時にライフラインやスタンションを持って艇を支えたりすると、ワイヤーは伸びてしまい、スタンションには艇の外側から力が掛かり、悪くするとソケットを固定しているデッキを貫通ボルトが緩みデッキからの水漏れの原因にもなる。ヨットを押したり引いたりするときは決してライフラインやスタンションを使ってはいけない。

 このスタンションの取り付け方法はそのヨットのハルとデッキの接合方法とも密接な関係がある。ボクは昔、名古屋の造船所で自艇の建造中にその作業に立ち会って詳細に見学したが、この頃は米国やヨーロッパのプロダクションボートが多くなり、艇内からデッキの接合方法やスタンションの取り付け方が見えないフネも多い。昔は必ず入っていた?ムアリングクリートのバックプレートがないフネもある。

 機会があるたびに自分のヨットのデッキ裏は覗いておこう。

※寸法は各艇種の実測値で多少の誤差はあります。又、ヨットの年式等は未調査です。
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by pac3jp | 2005-09-27 09:13 | ヨットの艤装と艤装品  

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