石油天然ガス・金属鉱物資源機構(JOGMEC)の新調査船「白嶺」

 2010.10月にJAMSTEC(海洋開発研究機構)の「ちきゅう」を見学したとき、沖縄海域の海底熱水鉱床からボーリングされたサンプルコアを見たことがある。それには日本が必要としている金属のうち銅、鉛、亜鉛、金、銀、それにレアメタル類も多く含まれているという。でも、熱水鉱床は700m~3000mの深海にあるので商業採掘は中々むつかしいらしい。

 「しんかい6500」でもその熱水鉱床を調査した画像などは見たことはあるが、それを資源として開発しようという雰囲気ではなかったなぁ。
 同じような海底調査船を運用しながら文部科学省所管ではどうも本来目的が違うようだった。

c0041039_16592821.jpg 海洋資源開発となるとやっぱり経済産業省所管で、石油公団と金属鉱業事業団を前身とする「JOGMEC」が運用する「第2白嶺丸」や「資源」が出てこなくてはならない。
 我が国は世界第6位の広いEEZをもち、その海底にはレアメタル等の金属鉱物資源やメタンハイドレート等が豊富に存在するといわれている。しかし、海底資源に目覚めた隣国から自国の権益を守るためにはしっかりとした調査が必要と目覚め、やっと日本にはなかった石油・天然ガス探査の三次元探査船「資源」を中古船ながら海外から購入した。
 でも自前だった海底調査船「第2白嶺丸」も建造からすでに30年がたち自動船位保持装置もないなど装備が古くなったので遂に新しい調査船を建造することになった。(船体220億円+調査機器75億円の合計295億円の予算がついた)

 新調査船は、平成22 年7月に三菱重工業株式会社下関造船所で起工し、平成23 年3月23 日に進水式が執り行われ、今後、調査機器の据付など艤装を経て、平成24 年1月末に完成、就航の予定であると報道された。

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 新海洋資源調査船「白嶺」の主な仕様
全  長: 118.3m、幅:19.0m、深さ:9.2m
総トン数: 約6,200t
航海速力: 15.5kt
航続距離: 約9,000海里
最大搭載人員: 70人(乗組員34 人,調査員など36 人)

 バルバスバウの後方には2組のトンネル型のスラスターと昇降旋回式(360°旋回が可能で、かつ昇降して船体内に格納可能なタイプ)のスラスターを装備する。一方、船尾部分の船底はバトックフロー船型(平らな形状)をしており、2基のアジマス推進器(360°旋回が可能)や船の直進性を向上させるためセンタースケグと針路安定フィンが設置される。

 また、停船状態や低速航走状態にて長時間のサンプリング調査や観測作業を行うことから、船体動揺を軽減するためのビルジキール及び減揺タンクを装備する。この結果耐航性能としては、最大風速15m/s、有義波高3mの気象海象条件下で、船体の横揺れを5度以内、縦揺れを2度以内、上下揺れを1.5 m以内(いずれも片振幅)に押さえることが可能である。

 船体中央部にはムーンプールを配置し、大型のつり下げ型調査機材の投入揚収が可能である。また、ムーンプールの船底部と作業デッキレベルにはそれぞれ2枚の蓋からなる扉を装備しており、巡航時やムーンプール作業等の状況に応じて扉の開閉(観音開き)が可能である。
また、新調査船ではこのムーンプールを利用して船上設置型掘削装置(取り外し可能)による掘削作業を予定している。

 新海洋資源調査船「白嶺」の発電・推進システムの諸元
■主発電機関(ディーゼルエンジン):最大出力2,635kW×720rpm-1×4基
(補助発電機関:最大出力860kW×900rpm-1×1基)
■主発電機:AC6,600V、60Hz、2,450kW ×4基
(補助発電機:AC450V、60Hz、800kW×1基)
(非常発電機:AC450V、60Hz、250kW×1基)
■推進電動機(プロペラ駆動用電動機):船尾アジマス推進器3,200kW×2基
■バウスラスター(トンネル式)790kW ×2基
■バウスラスター(昇降旋回式)820kW ×1基

 「白嶺」は電動機駆動による電気推進船であり、ディーゼルエンジンに直結させた発電機により、インバーター制御の電動機でプロペラを回転させて船の推進力を得る。この方式はプロペラの回転数の制御が容易で操縦性が良く、また振動が少ない等のメリットがあるため、調査船向きの推進システムである。さらに使用電力の負荷に応じて4系列の発電機関の運転台数を制御することで、効率的、経済的な運用が可能なパワーマネジメントシステムを備えている。また、エンジンで直接プロペラを回転させる方式では船体におけるエンジンの設置箇所に制約があるが、電気推進方式ではエンジン・発電機セットの設置箇所は自由にレイアウトすることが可能となり、調査船の用途に合わせた最適な船体の設計が可能となる。近年建造される世界の客船や海洋調査船の多くが、この電気推進システムを採用している。
 この船の発電機の総出力は10,850KWとなり昔の船とはえらい変わりようだ。

 搭載する装置の中でも特筆すべきものは、海底着座型掘削装置及び船上設置型掘削装置である。なお、掘削中の本船は2基のアジマスと3基のスラスタの自動船位保持装置(DPS)により総合制御される。

■海底着座型掘削装置の主な仕様
c0041039_1650336.jpg① BMS:深海用ボーリングマシン現有機(左画像)
稼働水深:6,000m
掘削長:20m
空中重量:4.8t(コア満載時)

② BMS50M:新型深海用ボーリングマシン
稼働水深:3,000m
掘削長:50m
空中重量:約15t(コア満載時)

○特徴
新型のBMS50Mは、AC3,000V、3φ、60Hzの電力を供給する38.1mmφの光・動力複合ケーブルにより接続され、海底に着座する水中部本体と、船上から本体をコントロールする船上部で構成される。 水中部は電動モーター、油圧ポンプからなる動力ユニット、パワースイベル等の掘削ユニット、ドリルビット・インナーチューブ等の掘削ツールを格納するマガジン状のラック(ストレージマガジン)などから構成される。本体の下部の3脚の接地脚が独立に垂直方向に伸縮することで、1mの段差、30度の平面傾斜地に設置可能。 

■船上設置型掘削装置の機能(下画像)
c0041039_16512580.jpg 船上部に掘削機本体を設置し、ムーンプールから掘削ロッドを海底に降ろして海底下を掘削する装置。掘削対象の土質条件に併せて、掘削ツールが変更可能である。圧力保持掘削ツールを搭載することで海底下に賦存するメタンハイドレート試料の採取が可能。

○主な仕様
稼働水深:最大水深2,000m
掘削能力:400m
掘削システム:ライザーレス、パワースイベル駆動

○特徴
マリンドリルのドリルデリックは、掘削機器及びダウンホールツール(ドリルパイプ内を通過する各種サンプル採取・測定装置類)を、安全かつ問題なく広く安定したサンプリングプラットフォームに装備し、動揺補正装置を備えた堅固なツインタワー形式の装置で、新調査船の中央部にあるムーンプールに合せて設置される。
通常、石油掘削など大規模・大深度の掘削の場合、ライザーと呼ばれるドリルパイプと掘削泥水が通る二重構造のパイプを船底から海底面に設置された噴出防止装置まで取り付ける「ライザー掘削方式」が採用されるが、本システムの場合、掘削深度が400mであり、ガスや石油の噴出の可能性が極めて低いことから、「ライザーレス掘削方式」、つまり、ドリルパイプだけを用いた掘削方式を採用している。

 我が国周辺海域では、島弧~海溝系に属する沖縄トラフ及び伊豆・小笠原海域において、多くの海底熱水鉱床が発見され、これらの内、いくつかは広範囲に分布することが確認されている。また、分布水深が700~1,600 mと世界的にも浅く、中央海嶺に分布するものと比較し金・銀の品位も高いことから、技術的・経済的にも開発に有利であると期待されている。

 現在JOGMECでは沖縄海域(伊是名海穴)及び伊豆・小笠原海域(ベヨネース海丘)を中心に、海底熱水鉱床の資源量を評価することを目的として、深海用ボーリングマシン(BMS)を用いたボーリングコアの掘削調査を実施中である。

 海底資源開発のうち、熱水鉱床については、10 年程度を目処に商業化を図ることが海洋基本計画に盛り込まれていて、平成30年には採掘に目途をつけるということだと思うがあと7年ですがさて・・・。

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 日本近海の海底熱水鉱床位置図


【参考Web】:JOGMEC 新海洋資源調査船の建造について  
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by pac3jp | 2011-06-05 17:11 | 特殊船  

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