有人潜水調査船「しんかい6500」

 支援母船「よこすか」の後部甲板の格納庫に「しんかい6500」が台車に乗って置かれていた。完成から20年、1000回以上の深海調査をこなしてきたもうベテランの深海調査船だ。

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完  工:1990年4月  総トン数:26.7トン
全  長:9.5m    航海速力:2.5ノット

 正面からみると正に深海に住む爪をもつ怪物の感じもするが各種カメラや投光ライトに説明板を吊り下げ少し愛嬌もある。正面の丸いラムネの口のような部分が乗員の覗き窓だ。世界の海を潜ってきたとはいうがFRPの船体外板は傷もなくきれいだ。両舷の一部側面は見学用に透明のパネルが張ってあり内部の部材が見える。

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 リチウムイオンのバッテリーBOXや接続された電力ケーブルも垂直スラスタのダクトもプロペラの油圧ポンプやモーターも、そして上部には浮力体のブロックが詰まり、と部品みんなに680気圧の水圧が直接掛かるのだ。大丈夫だろうかとボクは心配するが、いらぬ心配だろう。

 ただし、正副パイロットと研究者の3人が乗る部分のみが直径2mの真球のチタン製の耐圧殻になっているのだ。それも高い水圧下では少しのゆがみが殻の破壊につながるため、耐圧殻は可能な限り真球に近づけることが求められ、その精度は直径のどこを測っても0.5mm(真球度1.004)の誤差しか許されないという厳しいものだ。

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 「しんかい6500」と母船とは音波を使って情報交換をしている。電波と違って海中の音波の伝わるのは1.5km/secでとても遅い。深度6000mの「しんかい」から母船に電話の音声が届くのが4秒もかかる。気の短いせっかちな人はとても電話が出来ないなあ。でも水中TVカメラが撮影する映像は8秒に1枚のスロースキャンで母船に送ることが出来る。

 深海底の位置もGPSではなく音波を使った測位システムで確認される。位置情報は予め用意された海底地形図の上にプロットされる。

 最近は「ちきゅう」も沖縄トラフのレアメタルを含有するといわれる熱水噴出鉱床付近を掘削したとサンプルコアが展示されていたが、「しんかい6500」は早くから日本周辺の深海調査をやっていて、南海トラフのメタンハイドレートは有名だが南西諸島海域でもマンガン団塊や厚いマンガンに覆われた斜面が、また二酸化炭素やメタンのガスハイドレートも見つかっている。これらは天然資源のないわが国の貴重なエネルギーなのでしっかり活用してもらいたものだ。

 資源確保に躍起の隣国では7000m級の潜水調査船を建造中だと聞いていたが、もう就役しているかもしれない。日本も世界の全ての深海を調査できる次世代有人潜水調査船を早く造って欲しいもんですね。

【参考資料】:BlueEarth 2007/1.2月号 「しんかい6500」17年の軌跡
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by pac3jp | 2010-10-29 07:38 | 特殊船  

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