彎窠羅針(わんからしん)と船磁石

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 伊能忠敬は従来からあった導線法という測量法に交会法と天測をあわせて日本全国を測量した。
 曲がった海岸線を測量するとき、直線の連続になるように梵天をたて、杭を打ち、測線を設定し、その距離と曲がり角の方位を測りながら進んででゆく。距離は間縄や鉄鎖それに歩測も、方位は小方位盤(彎窠羅針(わんからしん)または杖先磁石ともいう)で測る。

 銅像の伊能忠敬が右手に持っている杖先磁石を特別講演で先生は「彎窠羅針」とおっしゃていたのでこの呼び名が正式名だろう。彎窠(わんか)という難しい漢字だがどうも「ジンバル付きコンパス」というイメージのように感じている。

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c0041039_5595773.jpg ↑会場にこの「ジンバル付きコンパス」の複製品が展示してあった。(覗尺は収納状態です)
 方位は十二支で表示されているが目盛りは360度切ってある。でも「逆針」(さかばり)である。この時代に精密な目盛りを切り、磁針の軸受けに水晶を使い、尚かつジンバルに乗ったコンパスは伊能忠敬のアイデアだそうだが中々大したものである。

 ちなみに、1560年にイタリア人が船舶用のジンバルを発明しているので彼は書物などそれを知り応用したのかもしれない。


c0041039_61247.jpg 逆針の磁石といえば和船の船磁石(右画像)を思いつくが測量の分野でも使われていたとはボクの新しい発見だった。
 でも、梵天の角度を測るとき覗きスリットを梵天に合わせ磁針の示す角度を読めば方位が分るので簡単で便利である。
 「逆針」は磁針タイプのコンパスを使い続けた日本独特のアイデアで、一番最初は船乗りではなくやっぱり測量家が考え使い始めたという。

 和船では操舵用として磁石の子-午(北-南)の方向が船首尾方向に固定して使用し、逆廻りになっている方位の磁針が指す針路が現在の進行方向になる。勿論、目標の方位を測定する普通の磁石もあったのでこちらは「本針」といったそうだ。

 和磁石の構造は轆轤でひいた木製の円筒を台盤としてその中をくり抜いた中心に鋼の支軸を立てその上に磁針を乗せた簡単なもので方位目盛りは十二支だが、中間点の刻線によって24方位となっている。製作者は「はりや久兵衛」「さかいや仁兵衛」など大坂の業者が大半を占めていた。船磁石に彎窠羅針のジンバルのような揺れにたいして安定した針路を示す機構が取り入れられなかったということは弁才船など殆どが沿岸航海でコンパスがそう重用されなかったからでしょうね。

 一昔前にヨットで使っていた同じような道具、「ハンドベアリングコンパス」は方位を測定する方向に向け、そのコンパスカードを読めばとっても簡単?なのだが、揺れるヨットのデッキでコンパス方位の測定は意外と難しかったですね。
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by pac3jp | 2010-09-14 06:14 | 歴史・民俗  

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