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「スハイリ号の孤独な冒険」 Part2

「スハイリ号の孤独な冒険」 Part2_c0041039_15463566.jpg 現在のロングクルージングヨットでも電力の確保には皆さん苦労している。
 1968年、まだヨットの電化が本格的に始まっていないスハイリ号の時代でも無線通信用やポンプ、航海灯などの電源にバッテリーと充電用の発電機は当然装備されていた。普通のヨットは補助エンジン付属の発電機で起動用バッテリーなどを充電していた。
 しかし、スハイリ号はその他にバッテリー充電専用のガソリンエンジンで2台のダイナモを駆動するシステムを持っていた。

 スハイリ号の建造時に、オーナーは航洋ボートに補助エンジンを載せるならには安全性が許す限り強力なものをのせるべきだとの考えから、4気筒38馬力の「BMC キャプテン・ディーゼル」が搭載された。LOA 32フィートのヨットにしてはかなり奮発したエンジンだったのだろう。

 当時、スハイリ号の船齢は3年、勿論エンジンもまだ3年しか使ってないものである。航海記にはホームポートから出発港のファルマスまで回航するのに機走の場面もあり普通に動いていた様子。

●1968年6月14日ファルマス出帆。
●1968年9月22日(100日目)2ヶ月ほど動かしてないのでエンジンがロックしてうごかない。故障発見。
●1968年9月25日(103日目)スターターを外しフライホイールを手で回してみるが1回転に40分もかかる。

その間、ガソリンエンジン発電機でバッテリーの充電を続けるがガソリンの残量が減ってきた。

●1969年1月28日(229日目)エンジンを分解する。ヘッドをめくりピストンを動かそうと手を尽くす。が、遂に諦める。
 後日、メカニックが分解するとシリンダー2本にひびが入っていた。素人が無理やり動かそうとしたときの傷らしく、エンジンは同型新品に換装した。

ロビンさんの教訓:外洋の帆走は快適だがエンジンのためには頻繁に回すことをお勧めする。エンジン各部の潤滑と防錆のために!

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 この航海は南緯40度より南の“吼える40度線”に沿って4ヶ月も航海する。風も強いが南極にも近いので気温が低いのだ。スハイリ号の暖房は灯油のプレッシャー・ランプだった。このヒーターが与えてくれる肉体的な快適さとその赤い灯色が又気持ちが良いという。しかし、衣服を乾かせるパワーは石炭ストーブにしかないのだが。

 現在は高緯度をクルージングするボートはしっかりしたキャビンヒーターを殆どが装備している。しかし、いま、この海域にいる「祈風」の暖房は「ホカロン」だという。確かに安くて嵩張らないし化学反応で発熱するので貯蔵の危険も少ないが、大丈夫かなと心配している。
 今シーズン、ニュージーランドからホーンを目指すヨットで唯一の「ホカロン」党だという「祈風」ガンバレ!!

【関連記事】:「スハイリ号の孤独な冒険」Part1

by pac3jp | 2010-02-25 16:08 |  

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