弁才船の帆走 Part2

 前の記事にある2枚の船絵馬をどうご覧になりましたか? 一見どちらも追風帆走のように見えますが、上の船の帆は右舷船首寄りの風を受けています。そのため風上になる帆の前部(ラフ)から船首方向に数本の両方綱が引かれているのがかすかに見えます。
 と、言うことで上の船絵馬が逆風・横風帆走中の弁才船です。下の船絵馬は両方綱が後に回っているので追風帆走です。

 因みに弁才船の積載量は本帆の反数で大体決まっています。上の船絵馬の本帆の反数(細長い部分)を数えてみると28反帆だったのでこの船は1300石積で、下は22反帆なので700石積という具合になります。

c0041039_16554092.jpg 弁才船の風上帆走性能については当時の船頭の航海記録などによると60度まで上ることが出来ると書かれているそうだが、「なにわの海の時空館」の復元・菱垣廻船「浪華丸」(25反帆の1000石積)で実際の性能を大阪湾で検証したときには70度まで上ったとされている。(左画像上)

 帆船の逆風性能にはリーウェイをどう押さえるかが問題だが、時代と共に大きくなってきたあの巨大な舵(1000石積で6畳敷大)もキールのような効果があったという。

 普通のヨットでは最大45度風上に進むと次はタッキングして反対タックで風上方向に向いながら風位の方向に進んでいくが、積荷を満載した上に上り角度も悪い弁才船はタッキング(上手回し)はしないそうで、ウエアリング(下手回し)でタックを入れ換える効率の悪いマギリ航法になる。
 白石一郎の海洋時代小説では上手回しの場面も出てきたように思うが、かなり海の条件がよくないとタッキングはできないのかもしれない。

 ボクも強風で波の悪い海をクルージングしているとき、安全を考え、ジャイブ回りで風上に向かうことも度々あった。でも帆走性能がよいレーシングヨットに乗っていたらボクでも絶対しませんね。

c0041039_16594578.jpg 画像左は「浪華丸」が右舷後方からの強風を受け、7ノットで追風帆走しているショット。帆船が一番よく走る風だが船首が低く甲板の防水が弱い弁才船が波の高い海を航海するときは大変だったのだろう。

c0041039_1703156.jpg 以前は弁才船である菱垣廻船や樽廻船が一枚の大きな帆だけで帆走していると思っていましたが、実際に速さを競う番船ではスピードや操船上必要な各種の補助帆を用いていたようで、右画像は19世紀中頃、「新綿番船船出帆図」に描かれた総帆を揚げた新綿番船。一番前の弥帆・中帆・伝馬帆・副帆・艫帆と目一杯帆をあげている。


【参考資料】1:なにわの海の時空館
      2:日本の船 和船編 安達裕之著
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by pac3jp | 2009-04-06 17:11 | 帆船  

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