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曳航測程儀(パテント ログ)

 以前に自作のハンド・ログについて書いたが、歴史の順から言えば次は曳航ログの番だがこの航海計器は簡単に自作は出来そうにない構造を持っているし、身近なところではもう見かけないのできっと博物館にしかないだろうという話になっていた。

 神戸港メリケンパークに神戸海洋博物館という名の博物館はある。いまや間借させている「カワサキワールド」のバイクやヘリコプター、そして新幹線車両の展示の方が人気がある。本家の海洋博物館は模型の船舶を並べただけで「海洋」についての内容は本当に寂しい展示なのでよっぽど暇な人しか入っていない様子だ。

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曳航測程儀(パテント ログ)_c0041039_16382149.jpg そんな海洋博物館で本船用の曳航測程儀(パテント ログ)を見つけた。一度も使われてない新品のようだった。現役当時はバックアップ用として大切に保管されていたものだろう。

 ボクはヨット用のウォーカー式の曳航ログは見たことはあるがこれは随分大きい。ローテーターの長さも40cmくらいはありそうだった。ログラインはないがハンドルのような調速機が面白い。使い方と名称はイラストをご覧ください。この展示されたセットには指示器だけで室内でログが読める受信機はついてないようである。

 イギリス人トーマス・ウォーカーは1878年ローテーターがログラインを介して船内にある指示器を動作させるという考え方で特許4369を取った。1890年にはローテーターをブリッジの横から出した円材から曳航させ特殊なジョイントで回転を直角に曲げてブリッジ内に導く方式を提案した。これは電気式が採用される1902年まで多くの客船でつかわれていたという。

 ウォーカー・ログはパテントをとったことから、P・ログといわれ長らく親しまれてきた。日本でも1955年頃、一般商船ではもう船底動圧式ログが使われていたが、タンカーだけはまだP・ログが使われていた。その理由は電気式である動圧ログ装置が積荷の油から発生するガスに引火する危険があるため電気を使わないパテント・ログがタンカーだけに用いられていたのだった。

 こんな話 《船酔いP・ログ》
船に弱いものをP・ログといってからかうことがある。P・ログは航海中は海中で横(寝て)になっていて、航海が終わると立てかけて格納しておく。船に弱い者は航海中は寝ており、港に入ると立っていることから、P・ログになぞらえて「P・ログのようだ」というわけである。


 一方、船底に穴を開けたくない人や電気がないヨット用にはウォーカー社から曳航索が20mばかりの小型のものが昔は販売されていたらしいが、今はもう骨董屋さんで探す部類でしょうね。野本先生のご本、スピン・ナ・ヤーンには速度も距離も測定でき電池で動くSTOWEの電子式曳航ログを常用していたと書いておられるが、いまでも販売されているかどうかは残念ながらボクは知らない。


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【参考図書】:航海技術の歴史物語 飯島幸人著

by pac3jp | 2009-01-10 16:43 | ヨットの艤装と艤装品  

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